苦しい立場にある労働者に自然災害が与える影響を考える
自然災害とインフォーマル労働者
「災害大国」といわれるほど、定期的に大規模自然災害に見舞われてきた日本では、災害に対するリスク管理が否応なく発展してきました。一方、発展途上国といわれる国々の中には、そうしたリスク管理が行き届いておらず、ひとたび自然災害が起これば、社会や経済が大きな打撃を受ける国が多数存在します。そうした国々において特に影響を受けやすいのが、何らかの要因によって、労働に関連する法律や、健康保険をはじめとする社会保障制度による保護が受けられない「インフォーマル労働者」と呼ばれる人々です。
インドネシアのケース
東南アジアのインドネシアでも、ストリートベンダー(路上でモノやサービスを売る人)をはじめとして自分で小さな商いをしている人、あるいは農業関係者などにインフォーマル労働者が多いとされています。その実態を把握することは簡単ではなく、政府や調査機関から得た「職種」「雇用形態」「収入」あるいは「被災した自然災害の種類」といった個人データをもとに分析します。それによると、やはり一般の労働者よりもインフォーマル労働者の方が自然災害時に収入が減少しやすく、とりわけ女性や年齢層の高い労働者に、その傾向が見られます。
誰一人取り残さない
日本に暮らす私たちから見れば、発展途上国の問題は遠い出来事のように思えるかもしれませんが、世界の経済はつながっています。インフォーマル労働者は、普段は法や社会制度の外側にいるため、社会からあまり注目されません。そんな人々にフォーカスをあててその実態や解決策を明らかにすることは、その国の経済をよくすることにつながり、さらには間接的に私たちの社会をよくすることにもつながるのです。何より「誰一人取り残さない」ことは、SDGsの原則にも定められています。世界から貧困に苦しむ人をなくすためにも、インフォーマル労働者、またその中でも苦しい立場にある女性について考えることの意義は小さくないのです。
参考資料
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