講義No.14130 経済学

苦しい立場にある労働者に自然災害が与える影響を考える

苦しい立場にある労働者に自然災害が与える影響を考える

自然災害とインフォーマル労働者

「災害大国」といわれるほど、定期的に大規模自然災害に見舞われてきた日本では、災害に対するリスク管理が否応なく発展してきました。一方、発展途上国といわれる国々の中には、そうしたリスク管理が行き届いておらず、ひとたび自然災害が起これば、社会や経済が大きな打撃を受ける国が多数存在します。そうした国々において特に影響を受けやすいのが、何らかの要因によって、労働に関連する法律や、健康保険をはじめとする社会保障制度による保護が受けられない「インフォーマル労働者」と呼ばれる人々です。

インドネシアのケース

東南アジアのインドネシアでも、ストリートベンダー(路上でモノやサービスを売る人)をはじめとして自分で小さな商いをしている人、あるいは農業関係者などにインフォーマル労働者が多いとされています。その実態を把握することは簡単ではなく、政府や調査機関から得た「職種」「雇用形態」「収入」あるいは「被災した自然災害の種類」といった個人データをもとに分析します。それによると、やはり一般の労働者よりもインフォーマル労働者の方が自然災害時に収入が減少しやすく、とりわけ女性や年齢層の高い労働者に、その傾向が見られます。

誰一人取り残さない

日本に暮らす私たちから見れば、発展途上国の問題は遠い出来事のように思えるかもしれませんが、世界の経済はつながっています。インフォーマル労働者は、普段は法や社会制度の外側にいるため、社会からあまり注目されません。そんな人々にフォーカスをあててその実態や解決策を明らかにすることは、その国の経済をよくすることにつながり、さらには間接的に私たちの社会をよくすることにもつながるのです。何より「誰一人取り残さない」ことは、SDGsの原則にも定められています。世界から貧困に苦しむ人をなくすためにも、インフォーマル労働者、またその中でも苦しい立場にある女性について考えることの意義は小さくないのです。

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創価大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 内海 友子 先生

創価大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 内海 友子 先生

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開発経済学

先生が目指すSDGs

メッセージ

開発経済学は、途上国の教育、健康、労働、農業、移住、ジェンダーなど多岐にわたる開発課題を探求する学問です。貧困問題や難民など世界の課題は複雑化し、一つの専門知識や従来の策では解決できないことも多くあります。本学部では、リベラルアーツを通して幅広い分野を英語で学び、少人数・学生参加型の授業の中で、こうした課題に対してさまざまな国から集う留学生・教員と議論し、多角的に物事の本質をとらえる力、社会に価値を創造し課題を解決していく力を磨いていきます。大学で共に考え学べることを楽しみに待っています。

創価大学に関心を持ったあなたは

創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、62カ国・地域、225大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。