スマホに1,000個! 見えない世界を操るナノ技術

スマホに隠された1,000個の部品
スマートフォンには、目に見えない小さな部品「セラミックコンデンサ」が約800~1,200個も入っています。ノートパソコンには約800個、自動車には5,000個以上が使われており、これらがなければ電子機器は動きません。コンデンサは電気をためる部品で、電気を流しにくい絶縁体材料でできています。スマートフォンでは、電源を安定させたり、音をクリアにしたりするのに使われています。昔の携帯電話は電話機能だけでしたが、今はインターネット、カメラ、決済機能まで搭載されています。機能は増えても手頃な大きさを維持する上で重要なのが、小型で高性能な部品の開発です。
原子100個分の極小世界を操る
セラミックコンデンサの性能を高めるには、チタン酸バリウムという材料の粒の形や大きさをコントロールすることが重要です。ここで扱うのは、数十ナノメートルの極めて小さい世界です。数十ナノメートルの粒子の中には、約100万個もの原子が詰まっています。非常に小さい領域を見ることができる電子顕微鏡を使って、原子の並び方(原子配列)を詳しく調べています。また、病院のCTスキャンのように粒子を立体的に観察し、粒子の内部を見ることも可能です。無機合成の技術を使って粒子の配列を整え、たくさんの電気を蓄えられるように革新的な材料を生み出しています。そして「粒子表面の科学」という新しい分野を切り開いています。
日本が世界をリードする技術分野
セラミックコンデンサの世界シェアは、日本企業が上位を占めています。また、ナノレベルの大きさを扱うナノテクノロジーは日本が世界トップレベルの技術力を誇っています。この技術がさらに進歩すれば、スマートフォンやパソコンはさらなる小型化・高性能化が進み、ロケットや飛行機、自動車など幅広い分野での活用が期待されます。目に見えないナノの世界を自在に操る研究が、未来の生活を変えていく無限の可能性を秘めているのです。
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先生情報 / 大学情報

茨城大学 工学部 物質科学工学科 教授 中島 光一 先生
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無機化学、セラミックス、電子顕微鏡先生が目指すSDGs
先生への質問
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