不確実性を理論で示す経済学
「唐揚げ」か「スムージー」、どちらを選ぶ?
ダイエット中の高校生が部活の後に何かを食べるとき、「学校のすぐ近くの唐揚げのお店」と「少し遠いが、ヘルシーでSNS映えするスムージーのお店」の2つの選択肢があるとします。なお唐揚げとスムージーの値段は同じとします。ダイエットのためにはスムージーを選択するのが望ましいでしょう。しかし、昼休みに「夕方は気温が大きく下がる」という天気予報を聞いたり、部活で動き回って激しく空腹になったりしたら、唐揚げを選択するかもしれません。選択につながる意思決定は、さまざまな情報や局面によって揺れ動く不確実なものなのです。
意思決定プロセスを数式で示す
経済学において、「誘惑」に着目した意思決定理論の研究が進んでいます。「ダイエット中なので、カロリーオーバーは避けたい」と考える人に、前述の唐揚げといった誘惑が現れたとき、意思決定の確率がどう変化するかを数式で示すものです。意思決定において重要な、その人の「好み(選好)」を数値化することは古くから研究されており、選好そのものは満足度の高さ・低さである程度の数値化が可能です。しかし、そこに至る意思決定は、誘惑などによって揺れ動く不確実なものである上に、意思決定のプロセスは外から観察ができません。
そこで、人の選択行動と「ベイズの定理」や「リースの表現定理」といった理論をひも付けることで、頭の中の選択基準を数式にして可視化する試みが続いています。誘惑の強さや、情報を受け取った人が行動するさまざまな条件を設定し、それが定理に当てはまることを証明し、その証明の積み重ねで理論を構築していきます。構築された理論を、実験で検証することも期待されます。
不確実な行動を理論的に示す
近年の経済学では、従来の理論で説明しきれないとされた心理学などの要素を取り入れた、「行動経済学」の研究が発展してきました。不確実な人間の意思決定のプロセスを理論で示す可能性を求め、研究は国内外で活発に行われています。
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先生情報 / 大学情報
龍谷大学 経済学部 教授(学部長) 兵庫 一也 先生
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