講義No.14194 教育

「詰め込み教育」を変えるのは、市民の力

「詰め込み教育」を変えるのは、市民の力

教育問題のイメージと実情のズレ

現代の学校教育での問題というと、多くの人はいじめを頭に思い浮かべるでしょう。しかし実際に一番深刻なのは、不登校児の急増だと考えられます。とりわけ近年はかつてないほどの勢いで学校に行けない生徒が増えています。子どもの自殺の理由としても、多くの人はいじめが原因だと考えがちです。ところが実際の警察庁のデータを見ると、いじめを背景にした子どもの自殺は非常に少なく、最多の原因として挙げられているのが学業不振です。続いて進路についての悩み、入試に関する悩みと、学業にまつわる要因が続きます。

詰め込み教育で疲弊する子どもたち

現在の教育政策で一番力を注がれているのが、平均学力の向上です。国際的な競争環境のなかで、日本でいかに優れた人材を育てるかという点に関心が集まっています。その結果、学校ではカリキュラムが高度化した詰め込み教育が主流となり、子どもたちが苦しさを感じる場面が増えていきました。学校制度とは本来、子どもの学ぶ権利を公的に保障するものであったはずなのに、その制度が子どもを追い詰める事態が生じているのです。
この状況を打破するためには、学習指導要領の作り方を根本から変えていく必要があります。今は教育の専門家や経済団体の関係者などが中心となって作っているため、子どもや保護者たちの民主的な声は反映されていません。現状を変えるためにも、一般市民が「自分たちが教育を受ける権利の主体である」という意識をもち、発信する力を身につける主権者教育を実践して、変化のきっかけを作ることが望まれます。

自分のモヤモヤが出発点になる教育学

教育学は、学校のあり方に対する疑問や、学校で覚えた違和感、モヤモヤを出発点に、その正体や原因を考えていくことができる学問であり、私たち一人一人の経験と直接つながる研究です。教育に関する現状を正しく理解して、学校制度を子どもたちのために取り戻していくことは、重要な社会課題なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和歌山大学 教育学部 教育学科 准教授 越野 章史 先生

和歌山大学 教育学部 教育学科 准教授 越野 章史 先生

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教育学、教育思想史

メッセージ

今は教育学部で教員をしていますが、私自身は学校が大好きなタイプでは全然なく、中学高校時代は理不尽な思いもたくさんしました。その遺恨から教育学という研究の世界に入ったようなところもあります。もし同じように、学校や教師に対してモヤモヤを感じている人がいれば、ぜひその違和感を大事にしておいてください。受験勉強で大変だと思いますが、息抜きでも構わないので、高校生のうちにいろいろな本を読んでおくと、自分の問いと学問を結びつけやすくなるはずです。

和歌山大学に関心を持ったあなたは

和歌山大学は未来を託そうとする若者、保護者のみなさんの願いを受けとめ、若者とともに希望ある未来を創り出したいと決意しています。
新たな学びの場・新たな生活の場へ、期待とともに不安もあると思いますが、国立大学の強みは、学生数に対して教員数が多く、学生と先生の"つながり"が強固なことです。なかでも和歌山大学は、小規模クラス授業や対話的授業を重視するなどきめ細やかな教育と、行き届いた学生生活支援の体制を整えています。そして、卒業後の進路・就職を拓くキャリア・サポートには定評があります。