「詰め込み教育」を変えるのは、市民の力
教育問題のイメージと実情のズレ
現代の学校教育での問題というと、多くの人はいじめを頭に思い浮かべるでしょう。しかし実際に一番深刻なのは、不登校児の急増だと考えられます。とりわけ近年はかつてないほどの勢いで学校に行けない生徒が増えています。子どもの自殺の理由としても、多くの人はいじめが原因だと考えがちです。ところが実際の警察庁のデータを見ると、いじめを背景にした子どもの自殺は非常に少なく、最多の原因として挙げられているのが学業不振です。続いて進路についての悩み、入試に関する悩みと、学業にまつわる要因が続きます。
詰め込み教育で疲弊する子どもたち
現在の教育政策で一番力を注がれているのが、平均学力の向上です。国際的な競争環境のなかで、日本でいかに優れた人材を育てるかという点に関心が集まっています。その結果、学校ではカリキュラムが高度化した詰め込み教育が主流となり、子どもたちが苦しさを感じる場面が増えていきました。学校制度とは本来、子どもの学ぶ権利を公的に保障するものであったはずなのに、その制度が子どもを追い詰める事態が生じているのです。
この状況を打破するためには、学習指導要領の作り方を根本から変えていく必要があります。今は教育の専門家や経済団体の関係者などが中心となって作っているため、子どもや保護者たちの民主的な声は反映されていません。現状を変えるためにも、一般市民が「自分たちが教育を受ける権利の主体である」という意識をもち、発信する力を身につける主権者教育を実践して、変化のきっかけを作ることが望まれます。
自分のモヤモヤが出発点になる教育学
教育学は、学校のあり方に対する疑問や、学校で覚えた違和感、モヤモヤを出発点に、その正体や原因を考えていくことができる学問であり、私たち一人一人の経験と直接つながる研究です。教育に関する現状を正しく理解して、学校制度を子どもたちのために取り戻していくことは、重要な社会課題なのです。
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