働く人のいのちと権利を守る 社会制度の歴史的変遷
誰もが安心して働ける社会のために
社会の安定においてもっとも重要なことは、働いている人々の健康と安全、すなわち憲法で保障された「基本的人権」です。ところが、それが守られているはずの国家公務員でさえ、過労死などの問題が起きています。国家公務員の労働問題の一因は、「人事評価制度」など働き方の評価基準にあります。
第二次世界大戦後、GHQの指示により国家公務員の勤務評定制度が導入されました。当初は仕事内容によって評価するアメリカ式の「職階制」が導入されましたが、日本では仕事の役割分担の曖昧さから定着しませんでした。その後、働く人の能力や業績を重視した職能資格制度に移行しましたが、これも評価基準や評価する人事部門の体制が完全ではなく、機能は不十分であったとされています。
行政改革がもたらす予想外の効果
1990年代の行政改革では新しい評価基準が再び導入されましたが、過去の経緯から、こうした人事評価システムの有効性には不信と反発がありました。しかし、実際の運用においては、年に一度の上司と部下の面談が義務付けられたことで思わぬ効果がもたらされます。それは、多くの部下が自分の仕事の意味や達成感を感じない状態であることが明らかになったことです。そして、上司たちはこれを理解して、目的の説明と具体的な指示が出せるようになりました。また、職場の同僚同士がお互いの仕事を理解することで、仕事の分担やワークフローが効率化されて、労働問題の一部に改善の兆しが見えはじめたのです。
時代に合わせて変化し続けるシステム
公正な人事評価制度のモデルを模索することは、国家公務員だけでなく、すべての働く人々の安全と健康を守ることにもつながります。このシステムは固定的なものではなく、物価や経済成長などの社会情勢、そして働く人々の求める価値観の変化によってアップデートされ続けていく必要があります。こうした社会制度の歴史的変遷の研究は終わることなく、次世代に引き継がれていく礎になっていきます。
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