教育格差の向こうにある「幸せの形」

選べる進路、見つかる幸せ
「教育格差」といえば、通常は学力や進学率の違いを指しますが、背景には「どんな生き方が成功なのか?」という問いがあります。ある高校では多くの生徒が難関大学をめざす一方、別の高校では地元で就職したり専門学校に進んだりする生徒が大半を占めることもあります。実際、非大都市圏のある地方での調査では、「大学進学」よりも「地元で働きながら暮らすこと」に幸せを感じている高校生も多く見られます。こうした姿を「消極的」と見るのではなく、「幸せの形は人それぞれ」と考える視点が、教育社会学にはあるのです。
地元を支えてきた教員の存在
地方では、小中学校の教員が地域を支える大事な存在です。ある地域の調査では「家や土地、お墓を守ること」を大切に考える人たちが、教員になることで地域にとどまり、地元の子どもたちの教育に長く関わってきたことがわかっています。ところが最近では、リモートワークなど新しい働き方が普及して、「どこで暮らしても同じ」という考え方が広まってきました。その結果、地域との結びつきが弱まり、地元を支えてきた教員の数が減りつつあります。非大都市圏の地域社会が今後さらに厳しい状況に直面する可能性もあり、地域と人をつなぐ新たな形が求められています。
「こうあるべき」にとらわれない
教育社会学は、「こうあるべきだ」という正解を出すよりも、さまざまな立場や考え方から問題を見つめ直すことを大切にしています。例えば「いじめ」について、「ゼロにすべきだ」という絶対的な前提を置くのではなく、「完全になくすことは出来ないから、被害を限りなくゼロにしょう」という考え方を取ったりします。大学に進学することはもちろん大切ですが、どこでどんなふうに生きていきたいかを考える視点も重要です。「努力すれば報われる」と言われても、家庭や地域の事情など、自分の力では変えられない場合もあります。現実に目を向けて、自分にとっての幸せを広い視野で考えていくことが、教育社会学にある一つの観点です。
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関西学院大学教育学部 教育学科 初等教育学コース 教授冨江 英俊 先生
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