他者の感情が理解できるのは、人間だけなのか?
あなたは他人の痛みがわかる人?
もし、目の前で友だちが痛そうな表情をしたら、どう感じますか? おそらく驚いたり、心配したり、自分まで痛みを感じるような気がするでしょう。人間を含む生物は「痛い」時に、反射的にリアクションをします。しかし、痛みに反応することと、「仲間が痛い表情をしている」と理解することは、全く別の認知行動です。他者の感情を理解することは、社会を築き、複雑なコミュニケーションをする上で重要なものです。では、他者の感情を理解することは人間だけの能力でしょうか、それともほかの生物にもあるのでしょうか。
ラットも感情を理解している?
そこで、群れで生きるネズミの仲間・ラットを使って実験が行われました。痛そうな表情と姿をしたラットの写真と、平常時のラットの写真を貼った部屋をそれぞれ用意して自由に行き来できるようにしたところ、平常時の写真の部屋の方が滞在時間が長かったのです。もし、ラットが仲間の感情を理解できていなかったら、2部屋の滞在時間は同じになったはずです。つまりこの実験から、ラットが仲間の「痛い」という表情を理解していることが考えられます。他者の感情を理解できる能力は、どうやら人間だけのものではないのです。
謎に満ちている「心」の研究
感情には、「怖い」「不安」などのネガティブ感情と、「楽しい」「安心」などのポジティブ感情の2種類があります。実験でラットが理解したのは「痛い」というネガティブ感情ですが、この感情は生存に強く関わるものなので、より反応しやすいと考えられます。では、ポジティブ感情はどうでしょうか。もし、この感情を人間しか理解できないのなら、それが人間の「心」を形成するのに大切なものかもしれません。反対にほかの生物と人間との差がなければ、種の進化が枝分かれする前の早い段階から、心に重要な感情や感情を理解する能力が存在したのだと言えます。果たして人間以外の生物には感情や心があるのでしょうか。そもそも「心」とは何なのでしょうか。心理の研究は、いまだ謎に満ちています。
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宇部フロンティア大学 心理学部 心理学科 講師 須藤 竜之介 先生
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