人が「人間」になるために必要なこと
自分の名前は他者が教えてくれる
人は自分が誰であるか、自分だけではわかりません。それを教えてくれるのは自分以外の人間、つまり他者です。名前でさえもそうです。人が自分の名前を言えるのは、子どもの時に何度も親(=他者)から名前を呼ばれたからです。つまり、自己は「人との関係の上に成り立っている」のです。人には名前以外にも、性格や意志、感情、知識、経験、思想、宗教などさまざまな要素があります。それらをまとめて「人間」と言うならば、人を「人間」にするのもしないのも、他者との関係です。
他者との関係が自己を変える
大学には、「キャリア教育」というものがあります。これはまさに、人を「人間」にするためのプログラムと言っていいでしょう。例えば、地域社会の協力で小さな子どもを持つ保護者の育児を手伝うという教育プログラムがあります。子どもと遊んだり、食事をさせたり、おむつを交換したりという経験を通じて、保護者と一緒に子どもの成長を見守るのです。最近は少子化の影響で小さな子どもと接する機会が少なく、子守の経験がない学生も少なくありません。先生や友だちがいる大学の環境とは違い、まったくの他人と関わるわけですから、ゼロから人間関係を構築する必要があります。このプログラムを通じて学生は、それまでの経験や常識では通用しない「自分」を経験します。
人間関係から積極性が生まれる
このような教育を受けた学生は内的に変化します。何事にも積極性が生まれてくるのです。これは教室内の講義では起こり得ないことです。保護者の大変さや子育てに関心を持つだけでなく、以前は消極的だった学生が、地域社会の問題にも関心を持つようになります。実はこれは、人間関係を重要と考える社会心理学の成果を教育に生かした例です。これは教育プログラムですが、もちろん実社会においても、自らを「人間」に成長させようとするならば、積極的に人間関係の中に入っていくことが必要なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。