偉大なイノベーター、ナイチンゲールから学ぶ
病気のとらえ方を変える
19世紀に活躍したイギリスの看護師フローレンス・ナイチンゲールは、近代看護の基礎を築いた先駆者です。顕著な功績の一つに、当時の病気の原因を環境要因との関連でとらえて、衛生状態の改善が病気の予防につながると主張したことがあります。病原菌やウイルスによる伝染という考え方が普及していない時代に、清潔な水や空気、栄養バランスのとれた食事が病気の回復やまん延防止に重要だと考えて実践に移したのです。クリミア戦争下の野戦病院で、衛生環境の改善によって死亡率を大幅に減少させたことは広く知られています。
データに基づく看護の実践
ナイチンゲールは、統計学にも深く学んでいました。クリミアの野戦病院では、死亡率をグラフ化して戦いではなく伝染病による死亡者が多いことを示しました。データを用いて問題を可視化し、具体的な改善策を提案・実施するという点で、エビデンスに基づく医療の先駆けといえます。
また、彼女は患者のベッドサイドに呼び鈴を置く「ナースコール」の原型を導入し、食事を運ぶためのリフト(エレベーター)を取り入れて、看護師の働き方の改革もしました。アイデアを出すだけではなく、それを実現するために、関係者を説得して信頼と協力を得る努力も惜しみませんでした。その痕跡は、ナイチンゲールが送った大量の手紙に残されています。
思想を現代に生かす
ナイチンゲールは多数の著書を残しています。主著である『看護覚え書』は当時のベストセラーとなり、多くの人々に看護の重要性と考え方を伝えました。そこに記された内容は重要な示唆に富んでおり、現代の医療・介護の現場にも取り入れられています。例えば、患者の生活に変化を創りだす重要性を説いています。この考えは、感染症対策と施設利用者の生活の質のバランスを重視した現代の施設の運営等にも反映されています。
現代の看護師たちも、ナイチンゲールの理念を継承し、自らも「イノベーター」となって、看護実践における新しい技術や方法を積極的に導入していくことが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
石川県立看護大学 看護学部 看護学科 教授 川島 和代 先生
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