絶滅寸前の魚たちを救うタイムカプセル

絶滅寸前の魚たちを救うタイムカプセル

開発による環境悪化で絶滅に瀕する世界の魚たち

日本にも世界にも、絶滅寸前の魚たちがたくさんいます。ダムの建設や水質汚染により魚たちが住む環境が悪化し、彼らが海に出れば近代的な漁法で一網打尽にされてしまいます。魚たちを絶滅から救う本質的な手だては、全面禁漁にし、水質を元通りに戻し、ダムを取っ払うことです。でも、それができるまで待っていたら、多くの魚たちは絶滅してしまいます。今、何ができるか? それが、別種の魚の体を借りて、目当ての魚を生み出す技術の研究です。
この技術は、まず、ある魚(ドナー)から特殊な細胞(生殖細胞)を取り出し、それを別の種類の魚(宿主)に移植します。移植された生殖細胞は、オスではドナーと同じ魚種の精子をつくり、メスでは同様に卵子をつくります。この精子と卵子を交配させて、ドナーと同じ種類の魚が生まれてくるようにするものです。
2007年、「ヤマメにニジマスを生ませる技術」が完成しました。現在は、「サバにマグロを生ませる技術」の完成に向けて、日々、研究が進められています。

今できる唯一の「種の保存方法」

また、この技術を使って、種を復活・存続させることもできるようになるでしょう。絶滅寸前の魚から生殖細胞を取り出し、液体窒素で冷凍して、タイムカプセルをつくるのです。これさえあれば、環境が元に修復された際に、凍結細胞を宿主に移植することで絶滅種の卵や精子を作ること、さらにはこれらを受精させることで絶滅種を復活させることも可能です。
米・アイダホ州の湖、レッド・フィッシュ・レイクに生息するベニザケは、環境悪化の影響を受け、2007年に湖へ帰ってきたのはたったの4尾でした。彼らを守るためにはタイムカプセルがどうしても必要で、この種は冷凍保存されました。
日本にも、絶滅に瀕している魚種が数多くいます。本州、四国、九州の川の上流域には、下流の水が温かすぎるために川を下ることができなくなった貴重な魚たちがいます。まだタイムカプセルは適用されていませんが、一刻も早い対応が望まれます。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 吉崎 悟朗 先生

東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授 吉崎 悟朗 先生

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生物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

生物学というと、DNAや細胞の研究をすると思われがちですが、そうではなく、何よりも生きた個体、海や川や湖で泳いでいる魚たちが基本だと、私は思っています。ですから、海や川や湖に生きている魚を見に行き、自分でも飼育して、魚へのイマジネーションを広げてほしいなあと思うのです。私は小学生のころにメダカの交尾と産卵を見て、めちゃめちゃ感動したことが、今日の研究意欲の土台になっています。あなたも、自分の一生の仕事に繋がる体験を、ぜひ若い頃にしてほしいと思います。

先生への質問

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東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。