都市に人が集まる理由を経済学的に考えてみよう
都市で起こる経済現象
都市経済学とは、都市空間特有の経済的現象や問題を考える学問です。企業や商店、人やものが都市に集中するメカニズムを解析するのです。
例えば、大企業の生産拠点が集まっている場所であれば、部品を作る関連工場も集まって競争し、供給面でもコストを減らせるため、最終生産物も安くできるというメリットがあります。さらには企業を支える税理士や弁護士などの需要もあり、企業周辺で働く人のための商店なども集まってきます。消費者はそこに居住することで、それらの産業の恩恵を受けることができるのです。こうして都市に産業や人が集中するのです。
集まっていることの魅力
東京の秋葉原には電気街があり電化製品を安く買えますが、果たしてわざわざ秋葉原まで買いに行くことに価値があるのでしょうか? 行くまでの交通費がかかりますし、時間の拘束も経済的価値として考えた場合、実は近所の電器店で買った方が得かもしれません。ところが、価値とは値段だけでは測れないこともあるのです。例えば、特定の状況の下で、人は選択肢が多いほど選んだときの満足度が高くなることがあります。このため秋葉原での買い物は、多様性を持っているという意味で付加価値が発生します。
ならば選択肢が多大にあるインターネットが普及すれば都市に人口が集中しなくなるのかといえば、そうではありません。逆にインターネットや交通網が発達したため、地方支社がいらなくなり、東京に一極集中が進んだケースもあります。人が集まるところにはさらに人が集まるというのは、一つのモデルケースに過ぎないのです。
特殊な街・東京
世界の大都市の中でも東京は特殊な都市です。例えばほかの国なら大金持ちは郊外に住む傾向がありますが、東京の富裕層は都心に住みたがります。これには文化的な楽しみの享受や、相続税の税率の問題など、複雑な要素が絡み合っているのです。東京の経済状況の全体像をモデル化するのは不可能なほど複雑なので、部分ごとにデータを取り出してモデル化して分析する必要があります。
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