実は多様な背景を持って、日本にやってきたイラン人たち
代々木公園に集まっていたイラン人たち
1990年代前半、日本ではイラン人の来住者が大幅に増加した時期がありました。ピークとなった1992年には、4万人以上のイラン人が日本にいたと推測されています。理由は、日本とイランとの間でビザ相互免除協定が結ばれていたことや、先進国としての日本に関心や憧れを持つイラン人が多かったことなどが挙げられます。
当時、東京の代々木公園には毎週末に数千人ものイラン人が集まっていて、ニュースで取り上げられるほどでした。しかし、彼らに対する日本社会の目は、だんだん冷たいものに変わっていきました。やがて、彼らは代々木公園から閉め出され、「不良外国人」として摘発すべき対象とされ、バブル景気の崩壊も相まって、大半の人々が日本を去っていきました。
さまざまな動機
当時の日本社会は、イラン人たちを「貧しい出稼ぎ」「違法薬物や変造テレホンカードの売買に手を染めている人たち」という非常に偏った見方で一括りにしていました。しかし実際の調査によると、日本に来ていたイラン人たちはそれぞれに多様な背景を持つ人々であったことがわかっています。当初は裕福で高学歴の人々が多く、その後は本国での商売拡大の資金を得るために来たバザール商人や、都市労働者出身の人々の割合が増えました。激動のイラン革命の時代を経験した後、体制に対する不満から、あるいは「もっと世界を知りたい」と、国を離れた人たちもいました。宗教面でも、イスラム教の人ばかりでなく、キリスト教徒なども少なからず含まれていました。
今改めて考えるべき外国人との向き合い方
2023年現在、日本に住むイラン人の数は5千人に満たないと推測されています。以前に比べると日本の経済力は弱体化し、諸外国の人々にとって魅力的な出稼ぎ先ではなくなっています。その一方で、外国人への偏見と排斥の動きは、30年前と変わらないか、むしろ悪化している部分もあります。こうした状況をどう捉えて、諸外国の人々とどう関わっていくか、あらためて考えるべき時が来ています。
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先生情報 / 大学情報
宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 国際政治経済専攻 准教授 倉 真一 先生
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