世界経済を考える上でヒントになる、中国の海外直接投資誘致
中国の経済発展を支えた「産業リスト」
世界第2位の経済大国となった中国は、30数年前まで、国民の半数以上が貧困生活を強いられていたのですから、その発展スピードがどれほどすごいか、理解できると思います。急速な経済発展を支えたのは、「海外直接投資」、つまり先進国の企業を誘致する政策です。中国政府が、自国経済の競争力を高められそうな産業分野をリストアップし、積極的に誘致した結果、「世界の工場」と呼ばれるほど多くの企業が中国に進出しました。
誘致した企業の技術を自国の財産に
当初、中国には工業技術が乏しい代わりに、安い賃金の豊富な労働力がありました。そこで、単純作業で完成させられる製品を作る企業を優先的に誘致し、技術を習得しました。技術力が高まってくると、今度はもう少し付加価値の高い製品を作るメーカーを誘致し、吸収する技術もレベルアップさせました。産業の裾野が広く、経済発展の柱となる自動車の場合は、海外メーカーと中国企業との合弁会社を設立し、間近で技術を学ぶことで純自国製品を作れるように努力しました。その積み重ねにより、中国の工業技術は新興国の中ではトップクラスと言われています。
日本が中国経済に学ぶべきこととは?
経済大国となった中国ですが、13億5千万もの人口を抱える国ですから、国民1人あたりのGDPは国際連合加盟国の真ん中あたりにとどまっています。一方、日本の1人あたりのGDPは中国の約4倍ですが、1990年代のバブル崩壊以降、経済の伸びは中国と比較にならないくらい鈍化しています。その原因の1つは、外国企業の誘致に消極的な点です。日本への海外直接投資額は、なんと世界199カ国中196位、ワースト4位なのです。
中国は今後、経済成長が停滞してなかなか先進国に仲間入りできない「中所得国の罠(わな)」と呼ばれる状態に陥ることが懸念されています。それでも長年に渡り中国がどのように高度な経済成長を続けてきたのか分析することは、日本経済に活力を注入したり、地域創生を進めるヒントとなり得るのです。
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宮崎公立大学 人文学部 国際文化学科 国際政治経済専攻 准教授 稲田 光朗 先生
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