詩人・アポリネールの「言葉」からフランスを知る
20世紀初頭、フランスで活躍したアポリネール
1880年、イタリア人の父とポーランド人の母の間に生を受けたアポリネールは、20世紀初頭のフランス文学を語る上で欠かすことのできない詩人・批評家として知られています。この年代は、映画や蓄音機など、新たなメディアが急速に発達し始めた時代でした。にもかかわらず、戦争や自らの恋愛、世相などを、あえて「言葉」にこだわって表現しようとした彼の作品を、いま改めて、どのように読むかという研究がさまざまに行われています。
フランス版「トキワ荘」でさらに磨かれた感性
手塚治虫、石ノ森章太郎らを輩出した「トキワ荘」は有名ですが、アポリネールはそのフランス版とも言える「洗濯船(Le Bateau-Lavoir)」と呼ばれるアパートで一時期をすごしました。同じアパートには、ピカソをはじめとする画家・詩人たちが居住しており、彼らとの交流は、アポリネールの作品や感性にも大きな影響を与えたと言われています。
新しいものを取り入れつつ、多様性を認める文化
彼の人間としての魅力として、新しい物事への反応の速さと、伝統や文化という古くから残っているもののとらえ直しという、一見背反した感覚を兼備している点が挙げられます。この時代はまだまだ映画の黎明期でしたが、いち早く映画に目を向け、自分でも脚本を書くなどする一方で、キリスト教以前の宗教などに興味を持つなど、幅広い感覚を持ち合わせていました。
これは現代のフランスの特徴にも通ずるもので、古くからあるものを大切にしつつ、大胆なチャレンジにも挑戦するというフランス人の気質が、アポリネールと重なるところがあります。血筋だけから言えば純粋なフランス人ではない彼ですが、フランス文化の大きな包容力が彼のような詩人を育んだのでしょう。アポリネールの作品や人柄・思想を通してフランスについて考えることも、新しいフランスの見方、楽しみ方と言えるかもしれません。
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