社会を動かす投資とガバナンス

機関投資家とは
投資家には、個人でお金を運用する「個人投資家」と、年金基金など、大きなお金を扱う「機関投資家」がいます。世界中で機関投資家が運用している金額は、合計約1京円にもなるといわれており、まさに桁違いのスケールです。経済には、実際にモノやサービスが売買される「実体経済」と、株式や債券などが取引される「金融経済」があります。最近では金融経済がどんどん大きくなっており、その中心に機関投資家の存在があります。例えば2008年に起きたリーマンショックでは、金融市場の混乱が世界中の実体経済にまで波及して、長期的な不況を引き起こしました。
物言う株主
企業を健全に運営するための仕組みを「コーポレートガバナンス(企業統治)」といい、この分野でも機関投資家は大きな役割を果たしています。企業では、株主が経営に関わる「議決権」をもっており、大量の株を保有する機関投資家は経営に大きな影響を与えられます。その反面、投資家が短期的な自分の利益だけに関心をもっていると、経営者へのけん制機能が効かなくなる例もあります。例えば近年、長年にわたって同じ人物がもち株会社のトップに君臨したテレビ局で社員への深刻な人権侵害が起こりましたが、これもガバナンスの欠如が引き起こした事例です。
企業が変われば社会も変わる
機関投資家は人権問題だけではなく、女性の活躍推進や環境保護への取り組みにも目を向けています。なぜなら、こうした取り組みは投資先の企業の持続可能性に深く関わるからです。例えば、あるECサイトが先住民の土地を奪っていたケースや、ファストファッションブランドが下請けの工場で従業員を劣悪な環境で働かせたケースでは、消費者からの強い反発を招きました。そうなれば企業の評価は著しく下がり、投資の効果も薄れてしまいます。
私たちが日常で食べ物を手に入れることや多くの人が働く場所も、ほとんどが企業を通してです。投資やガバナンスを通じて企業を変えることには、社会全体をより良くしていく力があるのです。
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先生情報 / 大学情報

明治大学商学部 商学科 教授三和 裕美子 先生
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