「そのバッグ良いね!」 褒めるという行為を考えてみよう
「褒め」と文化
日本では目上の人や、知らない人を褒める場面は少ないかもしれません。また他人から褒められた際は「そんなことありません」と謙遜しがちです。一方、英語を母語とする国や地域では、初対面の人や年上の人を褒めることは珍しくなく、例えば「そのバッグ良いね」といった声掛けから初対面の人と会話が始まることもよくあります。褒められた際も謙遜せず、「ありがとう」「嬉しい」と返すことで、コミュニケーションが円滑になります。このように「褒め」という行為は、「日本語母語話者」「英語母語話者」の違い、つまり文化によってあり方が大きく異なるのです。
クリティカルシンキング
では複数の言語を話す人は、「褒め」をどう使うのでしょうか。ある研究では、留学経験者などの多言語能力をもつ学生は、そうでない学生に比べると「褒め」の頻度が高く、さらにその後に質問を追加するといった傾向が見られました。また「褒め」は「クリティカルシンキング」という、批判的な視点を交えながらものごとを客観的にとらえて理解・判断することとの相関関係があるとも考えられます。感覚的な要素を含む「褒め」に、「なぜ褒めるのか」「相手は何を褒められたいのか」「相手の良いところはどこか」といった思考を加えることで「褒め」の質が高まれば、より良いコミュニケーションが可能になります。
褒め行為としての「いいね」
SNSの「いいね」も、「褒め」という行為に含まれます。過去の研究によると、人は「格好良い」「かわいい」などさまざまな思いを込めて「いいね」をつけており、また全フォロワー数のうち約3割から「いいね」があればうれしく感じるといったこともわかっています。
SNSなどコミュニケーションツールが増えて、人との接し方は多様化しています。「褒め」をはじめとする言葉がコミュニケーションの中でいかに使われて、さらに思考力がどのように働きかけるのかを考えることは、人と人の関わりの仕組みを明らかにして、さらにはより良い関係の築き方を考えることにもつながるのです。
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