児童福祉・児童養護に携わるために必要な3つの力
理想と現実のギャップ
児童福祉・児童養護に関心のある学生が、実習に行くと驚くことがあります。それは福祉施設にいる子どもたちに対して、自分が抱いていたイメージと現実の姿の間に大きなギャップがあることです。保護者からじゅうぶんな愛情を注がれる機会を持てずに育った子どもの中には、幼い頃に保護者から受けた言葉遣いが染み込んでいるために、乱暴なしゃべり方をしてしまう子どももいますし、大人に対して不信感や反感を抱いている子どももいます。しかも彼らからすれば、実習に来た学生も、大人の一員に見えるのです。
子どもたちと向き合うために必要な力
そんな子どもたちと向き合い、彼らに「こんなお兄さん、お姉さんになりたい」と自身の未来像として感じてもらうには、「想像力」「コミュニケーション能力」「生活力」の3つの力を培う必要があります。
想像力は、施設にいる子どもたちが幼い頃から経験してきたことを思いやる力です。たっぷりの愛情で保護者に大切に育てられた人には、保護者から大切にされなかった子どもの気持ちは、簡単にはわからないでしょう。仮に荒っぽい言葉遣いをしたり、攻撃的な態度を取ったりした場合でも、なぜそうするのかを想像力を働かせて理解することが必要なのです。
子どもたちが施設を出て自立するために
コミュニケーション能力には、自分が理解した内容を相手に伝える力と、相手の声なき声を受信する力があります。言葉の裏に潜む気持ちをくみとり、それを伝えることで相手と人間関係を築いていくのです。また、子どもたちは、たいてい18歳になると施設を出て自立します。それまでに本来なら保護者から教わるべき生活の仕方を自ら学ばなければなりません。そのためには福祉に携わる者が、きちんとした生活力を身につけて見本を示す必要があるのです。
子ども時代の暮らしによって、将来の夢に格差がつくことは絶対に避けなければなりません。これが児童福祉・児童養護の根本となる考え方なのです。
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大阪公立大学 現代システム科学域 教育福祉学類 教授 伊藤 嘉余子 先生
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