ロボットを通じて、人間の学習メカニズムを解き明かす
さまざまなロボット
ロボットには、工場内で搬送・加工・組立などを担う産業用ロボット、外食産業などで導入が進む調理ロボットや配膳ロボット、医師の指示に基づき正確にメスなどを動作させる手術支援ロボットなど、多くの種類があります。ここで対象にするのは人間に姿形が近いヒト型ロボットです。「知能ロボティクス」や「認知発達ロボティクス」などと呼ばれますが、ペンを手に握らせタブレット上に絵を描かせてみるなど、道具を正しく扱えるよう学習を促す方法などについての研究が進んでいます。
赤ちゃんはいかにして学ぶのか
絵を描いたり道具を扱ったりするロボットが、なぜヒト型でなくてはならないのでしょうか。認知発達ロボティクスでは、人間が赤ちゃんとして生まれ、何も知らないまっさらな状態から少しずつ物事を学習する過程そのものを解明するという本質的な目的があるからです。例えば、自分の前にある積み木を、右手を使って右側から押してみると左に少しずつ動きます。自分がなんらかの行動をとったときに、それによって生じる変化を視界にとらえ認識することで、モノを動かすにはどうしたらよいかを学んでいきます。行動学習と言いますが、こうした学習結果の蓄積により、モノをつかむ、投げるなど、より高度な動きも習得できるようになります。
幅広い応用分野
こうした学習モデルは、ロボットから離れたほかの分野でも生かせる可能性があります。ゲームなどはわかりやすいでしょう。各ステージをクリアしていくうえで、あるアクションがゴールに近づく行為なのかその逆なのか、その結果を評価しながら、より確度の高い方法をマスターしていくことができます。またある映像、例えば何か物体が床に落下する動画を見ると、仮にそれが無音でも人間は発生している音を連想できます。逆に音から映像をイメージすることもできます。こうした知見を積み重ねることで、脳のメカニズムの解明にもつながると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
京都橘大学 工学部 情報工学科 准教授 西出 俊 先生
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