コンピュータに視覚を与える

コンピュータに視覚を与える

視覚的不変性をさぐる。「認識」とは一体何か?

コンピュータビジョンとは、コンピュータに「人の目」の機能を与えることです。コンピュータが、見たものを正しく「認識」できるようにするためには、まず人がどのように見た物を「認識」しているのか調べていく必要があります。人の目では、3次元の世界を投影して2次元化して認識しているので、1次元分の情報が失われてしまっています。2次元に投影するということは、同じものでも見る位置が変化することで、全く異なった形になってしまうということです。例えば、コップは横から見たときには長方形や台形に見えますが、上から見れば丸く見えます。それなのに、人はこのコップをどの方向から見ても同じコップとして認識することができます。これは人間の視覚が、見る位置によって変化する形や色の中から、何かそのもの固有の不変な情報を抜き出しているためだと考えられます。このような不変な情報のことを不変量(invariant)と呼びます。コンピュータに視覚を与えるということは、この不変量を見つけ出し数式化することなのです。コンピュータビジョンは、ロボットをはじめさまざまな分野での応用が期待されています。

見えなかった所を見えるようにする

コンピュータに目の機能を与えると、異なる場所にあるコンピュータが認識した画像を協調させることで、一方向からは見えなかった物を見ることができるようになります。具体的には、自動車のナビゲーションシステムにこの仕組みを組み込もうとしています。多数の自動車にカメラを取り付け、この情報をほかの車と協調して利用することで、こちらからは見えなかった物陰の子どもや、犬が飛び出してくる前に知ることができるようになるのです。この仕組みは、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の一つのシステムとして、交通事故防止に期待されています。

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名古屋工業大学 工学部 情報工学科 メディア情報分野 教授 佐藤 淳 先生

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メッセージ

学問はどんな分野でも非常におもしろいものです。どんなものでも、突き詰めて考えていくことで、どんどん楽しさが増していきますから、大学に入ったらぜひ自分の興味の芽を膨らませてください。自分のやりたいことを見つけ、真摯に取り組んでいくと、誰もがその分野で世界第一級の達人になれます。世界中でこのことはこの人しか知らない、と言われるような人になってください。もう一つは、広い視野を持って海外の異文化に積極的に接していってほしいと思います。その体験は自分の世界をきっと広げてくれることでしょう。

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名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。