バクテリアの体は新物質の宝庫
さまざまな生物にさまざまな糖脂質
「糖脂質」とは糖と脂質が結合した物質です。生物の細胞膜の中には、糖脂質が必ず入っており、水にも油にも溶ける「両親媒性」という性質を持っています。糖脂質の種類や特性は、どの生物から得られたものかによって大きく異なります。例えば、病原菌が生み出す「エンドトキシン」という毒素も糖脂質の一種で、人体を危険にさらすこともありますし、「海綿」という生物から取り出した糖脂質は、医学の分野で制がん剤として利用されています。
バクテリアの糖脂質が免疫機能を活性化する
近年、化粧品のCMなどで「セラミド配合」という言葉をよく聞くようになりました。セラミドとは、糖脂質の一種の「スフィンゴ糖脂質」に含まれる物質です。この物質は保湿機能に優れているため、化粧品に使用されることが多くなりました。スフィンゴ糖脂質は、主に動物の細胞内に存在する物質なのですが、「スフィンゴモナス」という種類のバクテリアも、このスフィンゴ糖脂質を生み出すことがわかってきました。さらに、このスフィンゴモナスというバクテリアからとれるスフィンゴ糖脂質は、人間の免疫機能を活性化させる力を持っていることも判明し、医薬品などへの利用が期待されています。
微生物の大きな可能性
バクテリアなどの微生物は、実験室で培養して増やすことで、研究に使用するのですが、培養することができない微生物もたくさん存在します。これまで人類に発見された微生物はごく一部で、まだまだ発見されていない微生物がたくさん存在し、その中にはこれまでの常識をはるかに超えたものもいると考えられます。それらの研究を進めることができれば、さらに新しい物質を発見し、新しい技術に応用できるようになるでしょう。生命科学にはまだまだ解明されていないことがたくさんありますが、医薬品、食品、環境などの分野で、応用が大いに期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。