人間の「幸せ」を、学問として定義するなら
幸せを測る経済指標、「GPI」
経済成長の指標としてGDP(国内総生産)がよく使われます。近年、GDPは世界的にも停滞しており、「幸せ」が実感できないと感じる人も増えています。ただ、そうだとしても経済学の本来の目的は、GDPを上げることだけではありません。一方、1990年代後半に新しい経済指標として登場した「GPI」は、ハーマン・E・デイリー博士らが提唱した、持続可能な発展のための経済思想から生まれました。GDPには、家事労働が入っていない、環境悪化などに対応するため設備を整える「防御支出」が含まれない、所得分配の中身を問えないなど問題もあります。GPIはさまざまな場面で幸福度を測り指標とするため、「真の進歩指標」と呼ばれます。
まちを元気にするクリエイター
人口10万人当たりのクリエイター数を「ボヘミアン指数」といい、それが大きい都市は経済発展するということを、社会学者のリチャード・フロリダ博士が2000年代に提唱しました。カナダのバンクーバーやアメリカのポートランドはこれに基づき、まちづくりにおける「クリエイティブ戦略」を掲げています。こうした考え方が世界で受け入れられる理由は、幸せを感じる要素や住みやすい場所への感覚が、国や人種を問わず共通しており、普遍性があるからです。例えば、楽しそうなイベントをやっていれば見に行きたいし、人が落ち着いて暮らせるのは少しくぼまった場所であるといったことです。クリエイターが住みやすい、寛容性の高い場所は、LGBTQの人たちにも居心地が良いと言えます。
社会の幸福度を上げるための研究
お金で測れない非市場経済や非貨幣経済は、現実に動いています。人が幸せを感じる現場は、むしろそこにあるとも言えます。それらをどう見える形で組み立て、政策にまでつなげていくかという研究は、社会の幸福度を上げていくために必要です。貨幣経済とのバランスをうまく取って制度設計や社会設計に生かすことに、専門性が問われています。
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