地球上の最後のフロンティア「深海」で暮らす生物たち

地球上の最後のフロンティア「深海」で暮らす生物たち

太陽に依存しない生態系?

地球上の生物は、植物や藻類、植物プランクトンなどが、太陽の光のエネルギーを使って水と二酸化炭素から炭水化物を生み出す光合成を起点とした生態系を形作っています。ところがこの地球には、太陽の光に依存しない生態系が存在する場所があるのです。それは、地球に残る最後のフロンティア、「深海」の世界です。太陽の光の届かない場所にそうした生態系が存在することが明らかになったのは、つい最近、1970年代のことでした。

猛毒の硫化水素を利用するバクテリアが軸の生態系

深海底に至るまでは、クラゲ類がたくさん見られ、海底には、地中から高温の水が噴出している熱水鉱床と呼ばれる場所があります。深海は非常に水圧が強いので、200度や300度でも水は沸騰せず、周辺は比較的水温が安定しています。熱水に含まれる硫化水素は大半の生物にとっては猛毒なものですが、周辺には硫化水素を利用して炭水化物を合成するバクテリアが存在しており、そのバクテリアが生み出す有機物を起点とした生態系が周辺に育まれているのです。
体毛の上でバクテリアを養殖するゴエモンコシオリエビや、口や消化管を持たず体内にバクテリアを飼うことで生きているハオリムシなど、熱水鉱床の生物たちは、これまでの常識では考えられないユニークな特徴を備えています。

深海の生物を飼育することの意味とは?

深海の生物たちはデリケートですが、生命力が強いのも特徴です。水温や光、硫化水素などを適切に管理できる環境さえ整えれば、地上の水槽で飼育することも可能です。深海の生物を飼育して、その生態の研究を進めれば、潜水船で深海に潜って調べるだけではわからなかった、さまざまな事実が明らかになる可能性があります。
アプローチの困難さから、ある意味で宇宙空間よりも遠い世界である深海には、未知の研究テーマが宝物のようにたくさん眠っているのです。そうした数々の謎を解明することは、これからの地球のあり方を考えていく上でも貴重な手がかりとなるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

北里大学 海洋生命科学部 海洋生命科学科(環境生物学講座) 教授 三宅 裕志 先生

北里大学 海洋生命科学部 海洋生命科学科(環境生物学講座) 教授 三宅 裕志 先生

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海洋生命科学、海洋生物学、水圏生態学

メッセージ

私は北里大学で、主に海の生物の生態の研究をしています。
海というのは、実は宇宙よりも行きにくい、私たちのすぐ近くにありながら、まだまだわからないことだらけの世界です。そういう場所に生きている海の生物の秘密を解き明かしていくことは、これからの地球環境を守っていくような仕事につながっていくと思います。すぐ近くにあって、でもわからないことの多い海を、一緒に研究して、これからの地球を支えていきましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

北里大学に関心を持ったあなたは

北里大学では「なりたい、を超えていく」をコンセプトに、思い描いた将来像をも超えていけるような、社会に出てからも成長し続ける人の育成をめざしています。
また、「生命科学の総合大学」として、生命科学の基礎的研究を行う分野(理学部)、 動植物と環境に関する分野(獣医学部、海洋生命科学部)、人間の生命と健康に関する分野(薬学部、医学部、看護学部、医療衛生学部)の3つのフィールドから総合的にアプローチ。2023年4月には未来工学部データサイエンス学科を開設。まだ起きていない「未来」の課題に挑みます。