なぜこんな病気が流行するのだろう?発展途上国と感染症
ブルーリ潰瘍とは
アフリカの熱帯地域を主として患者報告のある「ブルーリ潰瘍(かいよう)」という感染症は、細菌が原因の皮膚病です。腕や脚など露出した場所に発症します。初期は虫刺されのような紅斑(こうはん)ですが、進行すると徐々に大きくなり皮膚の下にしこりのようなものができます。数週間で皮膚の中心部が自壊して潰瘍となり、皮膚の下層の組織までがあらわになることもあります。痛みはあまりありませんが、治療が遅れると関節が曲がったり、大きな痕が残ったりします。ただ、死に至ることはまれです。水中の虫や蚊などが細菌を媒介すると考えられていますが、感染経路ははっきりとはわかっていません。
治る病気なのに治療が進まない
この病気は潰瘍が小さい段階で見つかれば安価な抗生物質で治る病気です。日本でも症例はありますが、衛生状態がよく、医療・福祉体制が整っている先進国であればすぐに治り、感染が広がることもありません。ところが、発展途上国では感染報告がなくなりません。これはまず、衛生環境、医療体制という社会基盤が脆弱(ぜいじゃく)だからです。さらに、病気を治すには正しい科学的知識が必要ですが、現地の信仰や因習が科学と相容れない場合があり、治療を難しくしています。何よりも死に至る病気でないため、社会の関心が低く、治療を後回しにして重症化してしまう人々が多く見られるのです。
発展途上国の発展は先進国の課題
発展途上国に対しては、WHO(世界保健機関)やNGO(非政府組織)が抗生物質を提供したり、衛生教育を行ったりしています。しかし、ブルーリ潰瘍のような感染症が流行している地域や国が、集中的に社会基盤を改善しようとしても、なかなか進んでいないのが現状です。これは、発展途上国だけの問題ではなく、先進国にとっての問題でもあります。グローバル化が進んだ現代において、著しい格差が世界の情勢に混乱をもたらすことがあります。発展途上国を援助して、社会基盤を整えることは先進国にとっても重要な課題なのです。
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九州国際大学 現代ビジネス学部 国際社会学科 教授 福西 和幸 先生
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