スコットランドが海外から人を招こうとしているのはなぜ?
ネーション・ブランディングって?
「ネーション・ブランディング」とは、外国から人やお金を呼び寄せようと、各国や各地域で行っているキャンペーンのことです。例えばスコットランドでは、2018年頃からネーション・ブランディングが始まりました。専用のWebサイトを立ち上げて移住や労働に関する情報を発信するほか、スコットランドの自然や文化などを美しい写真や動画で紹介して国外からの注目を集めようとしています。
労働者の確保と独立をめざして
なぜ、イギリスではなく、スコットランドとしてネーション・ブランディングを行っているのでしょうか。スコットランドの少子高齢化は、イギリスの他地域やヨーロッパ諸国に比べて早いと予測されています。そのため将来的に労働者をどう確保すべきか、分厚い福祉政策をいかに実現させるのか頭を悩ませています。また、スコットランドにはイギリスから独立したいと思っている人が多いものの、独立後に経済を成り立たせることができるのか不安を感じて実行に移せずにいました。そこで、経済的な自立も見据えてネーション・ブランディングを始めたのです。
スコットランドのナショナリズム
スコットランドのネーション・ブランディングの特徴は、「ディアスポラ」と呼ばれる人々を主な対象にしていることです。ディアスポラとはスコットランドにルーツを持つ人々を指しており、その多くはアメリカやオーストラリアなどで暮らしています。スコットランドに戻ってきて働いてもらったり、貿易関係を結んでお金の流れを呼び寄せたりするために、政府は情報発信を始めました。また、スコットランドに留学経験のある人やその家族など、外国人を積極的に受け入れているのも特徴的です。こうした取り組みには、外国からさまざまな人材を呼び寄せてイギリスからの独立をめざす、スコットランドのナショナリズムが色濃く表れています。
ただしネーション・ブランディングが本当に効果的なのかは、わかっていません。この点はスコットランドの政策担当者への聞き取り調査などが必要です。
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神田外語大学 外国語学部 英米語学科 講師 髙橋 誠 先生
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