「男らしさ」って何だろう? 「自分らしさ」って何だろう?
表象文化論って何?
「表象文化論」とは、芸術や文学、社会・文化現象一般について、ジャンルにとらわれず、分野を横断しながら検証していく学問です。1つのテーマに対して、今起きている現象だけを追うのではなく、歴史的背景、地域的要因などを考慮しながら掘り下げることで、現在の現象がいかにして起こったかが見えてきます。
昔からあった「美男子萌え」
例えば、「男らしさ」について、ヨーロッパではギリシア時代以降、軍人としての男らしさが非常に大きな意味を持ってきました。「戦場で勇ましく戦うマッチョな男性像」、それが富国強兵や帝国主義、植民地主義などの国策を支えてきたとも言えます。日本でも明治時代以降、欧米にならって徴兵制が導入され、マッチョな男に憧れた女性たちもいました。しかし当時の大衆文学などでは、軟弱な美男子が刀を持つとめっぽう強いといったヒーロー像が、男女問わず支持されていたようです。現代を見ても、一見中性的な男性が人気なのも、欧米とは異なるところでしょう。
「らしさ」の多様化の中でどう生きるか
また、日本では、女性が掲げる理想の男性像として、かつては「三高(高学歴、高収入、高身長)」がもてはやされ、現在では「三低(低姿勢、低リスク、低依存)」が好まれるなど、女性が「男らしさ」の概念をリードしてきました。戦後の1つのモデルだった「24時間働く企業戦士」という男性像が崩壊し、男らしさが多様化していることもあり、男性にとって現代は、具体的な理想像が描きづらい時代かもしれません。
近年ではLGBT(同性愛者、両性愛者、性同一性障がい者)の社会運動をはじめ、男女の枠にとらわれず、自分らしく生きることを模索する動きも盛んです。しかし「自分らしさ」とは何なのか、今度は「自分らしさ」の枠にとらわれすぎてはいないかという問題も出てきます。そうした視点で文化・社会現象を見ていくことは、自分がいかに生きるかにもかかわる、意味深い考察でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 人文社会学部 人文学科 准教授 古永 真一 先生
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表象文化論先生への質問
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