環境によってストレスをコントロール

環境によってストレスをコントロール

部屋の色によってストレス度が変わる

ストレスの感じ方は環境によって異なります。例えば、ネズミを使った動物実験で、黒、白、グレーでできた3種類の箱を用意し、もともと同じ環境にいたネズミをそれぞれの箱に移します。夜行性のネズミは、暗い所を好むので、黒い箱のネズミはストレスがなく、白い箱のネズミはストレスを感じ、グレーはその中間でした。その後、さらに音などの刺激を与えたところ、黒い箱と白い箱のネズミはストレスを強く感じましたが、グレーの箱のネズミはそれほどストレスを感じないという結果が出たのです。グレーという適度にストレスを感じる環境が、ネズミのストレス耐性を高めていたと言えるでしょう。

脳の伝達物質セロトニンとストレスの関係

ストレスと非常に密接な関係にある脳の伝達物質がセロトニンです。ストレスが高い状態が続くとセロトニンの放出が低くなり、また、うつ病の人の脳ではセロトニンの濃度が低いことが知られています。そのため抗うつ剤として、セロトニンの放出量を高める物質を含んだものが開発されています。しかし、通常は薬に頼らなくても運動などを利用すれば、適度な刺激が脳に与えられセロトニンの濃度が上がり、ストレス解消につながります。

ダイエットにもセロトニンの影響が?

太ってしまう原因にも環境によるストレスとの相関関係が認められています。動物実験で、自由に運動できる環境にいる個体と、単独でいる個体を比べると、後者の方が食べる量が多いというデータがあるのです。また集団で仲良く暮らしている個体と単独でいる個体を比べても、後者の食べる量の方が多くなります。つまりストレスが溜まると摂食量が増える傾向にあるのです。これにもセロトニンの放出量が影響しています。セロトニンが出ると満足感を得られるので、少し食べるだけでも満足できるのです。
このように脳の伝達物質の働きを理解し、意図的に刺激をコントロールすれば、将来ダイエットにも役立つかもしれません。

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東京都立大学 人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス学域 教授 北 一郎 先生

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行動生理学

メッセージ

大学で勉強していくには、自分の専門についてはもちろんのこと、いろいろな分野について話せる知識を身につけておくことをお勧めします。ひとつの分野の専門家になっても、違う分野の専門家と話せないのはもったいないことです。専門を1とすれば、0.5程度のほかの分野の知識があると望ましいです。物事をさまざまな角度から見られるようになり、分野を超えたコミュニケーションも容易になるでしょう。専門外の分野でも、気になることがあれば自分で調べ、積極的に勉強してみることです。

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