自然と共生する「トトロ型」社会をめざす土木技術
自然との調和を大切にする21世紀型土木
日本の土木技術は、世界に誇る技術として知られています。これまでに橋や道路、ビル、堤防など、人々の暮らしを便利にするインフラ(社会的基盤)が造り出されてきました。そのような中、技術的な進歩ばかりではなく、自然環境への配慮が求められています。自然と人間が共生する21世紀型の土木とは、どのようなものなのでしょうか。
自然を生かして土地を整備する
災害で水道が断たれるようなことは、近代化によって起こった問題の一つです。昔は家庭に井戸があり、緊急時にも水に困ることはありませんでした。自然はしばしば私たちの暮らしに被害をもたらしますが、同時に多くの恵みをもたらします。災害リスクを避けることと同様に、自然とのつながりを考えながら土地を整備することが重要なのです。
例えば、川沿いを整備するとき、周辺の田んぼに魚道を確保したり、洪水が起こった際に生き物が逃げ込めるように遊水地やワンドなどの湿地をつくったりする取り組みが進められています。河岸をコンクリートで固める従来型の工法ではなく、自然を生かした生態系を壊さない土木工事に、地域住民の期待も高まっています。
また、日本の年間平均降水量は世界の年間平均降水量の約2倍と言われています。アスファルトに覆われた都市では、雨は染み込むことなく河川へ流れ込みますが、雨水をタンクなどに貯め、生活用水や緊急用水として有効活用しようという動きもあります。
「つながり」がキーワード
アニメ『となりのトトロ』に出てくるような社会をつくりたいという若者が増えています。「トトロ型」の社会とは、人工的かつ合理的な都市ではなく、自然と共生し資源の循環が可能な社会です。そのような社会をつくるためには、工学をはじめ生態学など、さまざまな分野が協力して研究を進める必要があります。自然と人間とのつながり、人間同士のつながりができるまちづくりを進めることこそが、わずらわしさや不便さがあっても、社会のあるべき姿だと言えるかもしれません。
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