一人で抱え込まない、お互いにこころのケアができる社会に

ストレスにどう向き合うか
精神看護では、ストレスを感じた時に、本人にできる対処と、周りにしてほしいことを伝えています。まず、本人にできる対処は、ストレスの原因となっている悩みや不安を、一人で抱え込まずに、誰かに相談することです。不安や悩みは気づかないうちに大きくなってしまうので、必ず誰かに相談することがとても大切です。とはいえ、自ら相談できない人もいます。そこで、周りの人にしてほしいことは、本人の大変さに気づいて、声をかけることです。そして、相手の思いを徹底的に聴いてください。気の利いたことを言う必要はないですし、相手が黙っている時はそばにいるだけでも良いです。SOSを出すことと、気づいて受け止めること、ストレスには双方向で対処することが大切です。
「ゲートキーパー」を増やす
日本では2007年から国の重点施策として「自殺対策ゲートキーパー(GK)」の養成が行われています。GKには誰でもなることができ、こころの健康に問題を抱える人に気づいて声をかけ、必要な支援につなぐ役割があります。自殺リスクの高い人の約90%が、何らかの精神疾患を抱えていたとされるため、地域にGKを増やすことも精神看護の役割だといえます。養成研修では、GK自身も一人で抱えずに、周りに頼ることも伝えられています。また、研修の効果やその持続性の評価も進められています。
「弱さ」を出せば、周りが助けてくれる
「病は市に出せ」という言葉があります。先行研究によると、日本の中でも極端に自殺の少ない地域に特徴的な風習であることがわかっています。「病」には身体症状だけではなく、不安や悩みも含まれます。病を口に出せば誰かが何とかしてくれるという風習が、自殺を減らしていると考えられています。周りに苦しんでいる人がいる時の対応など、GK養成で普及している知識は、日常生活に還元でき、みんなが知ることで互いにGKになることができます。
このように、精神看護とは、こころのケアを通して、誰もが安心して暮らせる社会づくりをめざす分野なのです。
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先生情報 / 大学情報

大分県立看護科学大学看護学部 講師後藤 成人 先生
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