リーダーの悩みや課題を明らかにし、より良いキャリア形成に生かす
市役所で「リーダーになること」で生じる悩み
私たちの生活に密着する「公共サービス」を広く担っているのが全国の市役所です。そこで働く公務員は身近な存在ですが、一方で彼らが仕事やキャリアを重ねる上で、どのような悩みや課題を抱えているかはあまり知られていません。民間企業とは異なる働き方があることもその理由の一つでしょう。特に初めて部下をもつ係長という「リーダー」の立場になると、部下を育てながら成果に結びつける役割や重要な意思決定も期待されます。「リーダーになる」という大きな「キャリアの転換期」にどのように行動すべきか、悩む人は少なくありません。
市役所のリーダーへの調査から見えてきたこと
ある研究では、市役所で働くリーダーたちへの調査が行われました。これまで係長を経験したモデルとなる人に「係長時代にどのように行動していたか」をインタビューし、178の行動が抽出されました。また現役の係長に対してもそれぞれの行動の実践について調査し、その回答を統計解析して、どの行動が個人の業績に結びついているかを調べました。結果的に、高い業績を上げている係長は「部下をはじめ周囲の意見を十分に聞く」「判断に迷ったときは一人で抱え込まず上司に相談する」など、的確な判断が下せるような行動を多くとっていることがわかりました。こうした研究の成果は、実際に市役所が実施するキャリア研修の中でも活用されています。
リーダーたちの悩みに応える現実的な問題解決力
こうした研究には「組織行動論」「人的資源管理論」といった経営学の知見が用いられています。前者は働く人のキャリア、モチベーション、リーダーシップなどを、また、後者は働く人々をどのように採用して異動・配置し、育成し、評価して報酬を提供すべきかという職場のルールやその運用方法を考える学問です。いずれも職場で現実に起きている問題をはじめ、「絶対の正解」がない問題に直面することもあります。その中でベストな解決策を考えていくという「現実的な問題解決力」が求められる分野です。
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先生情報 / 大学情報
群馬県立女子大学 国際コミュニケーション学部 グローバル社会システム課程 教授 日詰 慎一郎 先生
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経営学、組織行動論、人的資源管理論先生が目指すSDGs
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