タグにも手術にも さまざまな分野に広がるRFID技術の可能性

タグにも手術にも さまざまな分野に広がるRFID技術の可能性

電波を使って通信を行うRFID技術とは

大型衣料品店のセルフレジで精算するとき、商品のカゴを台に置くだけで合計額があっという間に自動で計算されます。それができるのは、商品一つ一つに付いているタグに「RFID」の技術が使われているからです。RFIDとは、電波を使って通信を行う技術です。読み取りにいく必要があるバーコードに対し、RFIDはそこにあるだけで通信が可能です。チップに入れた情報を読み取るため、物販の際にあらゆる商品情報を搭載できます。またほかにも交通系ICカードや、犬や猫に装着するマイクロチップにも使われています。

肺がんの手術にも応用

生活を便利にしてくれるRFID技術は、手術にも応用されています。例えば、肺がんの内視鏡手術です。これまで肺がんの手術では、外からピンポイントで病巣を特定することが難しく、そのため病巣と周辺を広い範囲で切除していました。そのため、患者への負担が大きかったのです。しかしRFID技術を応用すれば、患者への負担を軽くする可能性があります。まず手術前診断で、RFIDチップを気管支から病巣の近くに埋め込みます。これにより、手術時は病巣の場所が3次元で把握できるため、切除すべき箇所が確実にわかります。しかも最近主流になりつつある、内視鏡手術を行う医療ロボットとの相性がいいこともメリットです。

生活のあらゆる場面に利用されている電磁波

RFIDに利用される電波とは、光と同じように電磁波の一種です。波長が長い電波はエネルギーも小さく、交通系ICチップやマイクロチップ、マイクロ波ならWi-FiやBluetoothなどに利用されています。最近、車の自動運転システムにも応用されているミリ波レーダーは、もともと飛行機の管制システムやミサイルなどで使われていたものです。電磁波を応用した技術は、物理学の分野を超えて医学や生物など多岐にわたります。そのため、これからも技術の進歩や新しい分野への応用が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

崇城大学 情報学部 情報学科 教授 杉浦 忠男 先生

崇城大学情報学部 情報学科 教授杉浦 忠男 先生

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光計測、生体医工学、応用光学、通信工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

物理が好きで、特に光について学びたいと思っていたとき、日本のある企業が光に対してトランジスタのように作用する素子を作ったことが報じられました。そこで大学では、光について学ぼうと決め、光計測の専門家になりました。光は電波と同じく電磁波の一種なので、研究領域を電波の世界にも広げて、広く電磁波の利用にまつわる研究を続けています。この研究は、物理の知識が医学や生物の分野など、さまざまな分野につながります。ぜひいろいろなものに興味をもち、学んでほしいです。

崇城大学に関心を持ったあなたは

崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。