近代看護の基礎を築いたナイチンゲール
日本で看護師が登場したのは戊辰戦争
看護の歴史は人類の誕生とともに始まっているとされています。生まれた子どもを養育し、熱が出たら世話をする、けがをしたら手当をすることなどは日常の中で行われてきました。社会が成熟してくると、ヨーロッパではキリスト教の、日本では仏教の僧たちが病人の看護に当たり、看護が男性の手による時代が長く続きました。
看護が専門的な職業となったのはさほど昔のことではありません。1854年、自ら志願してクリミア戦争に行き、看護師の女性たちを率いて従軍看護師として活躍したイギリスのフローレンス・ナイチンゲールが近代看護の道を開きました。日本で看護師が生まれたのは戊辰戦争の時。ナイチンゲールの活躍を伝え聞き、女性が傷病兵の手当に当たりました。明治時代になると、専門の看護師を養成する日本初の看護学校が開設されました。以後、多くの女性たちも看護師として働くようになったのです。
「看護覚え書き」の功績
ナイチンゲールの功績は「クリミアの天使」といわれたクリミア戦争での活躍ばかりでなく、ナイチンゲール看護学校の創設など数多くあります。中でも『看護覚え書き』という書物で「看護とは何か」を初めて文章として残したことが看護学に大きな影響を与えました。この書物では病気とは、健康とはどういうことかを細かに分析し、看護とは医師のすることと違い、患者の生命力の消耗を最小限にして自然治癒力を高めるようにすることだと説いています。新鮮な空気や太陽の光の採り入れ方、静かな環境で清潔さを維持する方法、食事の内容、病人に対する言葉のかけ方など、実に具体的に書いています。約150年前に書かれたものなのに、その内容は現代の看護学の基礎として連綿と続いているのです。医療技術が進んだ現代に読んでもまったく古さを感じないのはすばらしいことです。今後もナイチンゲールの看護の精神は受け継がれていくでしょう。
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