講義No.01666 材料工学

ガラスの不思議を探る

ガラスの不思議を探る

結晶化していない固体

ガラスという言葉は、2種類の意味があります。一つは、一般的にコップや、瓶、窓などに使用されているガラスです。もう一つは3次元的に網目構造を持つような分子のつながりをもち、しかもその構造がルーズ(不規則)な状態でつながっていて、結晶化していない固体をガラス状態と言います。結晶とは、原子や分子が規則的な繰り返しパターンを持って配列している状態を言います。ガラスは、ケイ酸塩を主成分とするものが一般的ですが、必ずしもケイ酸塩である必要はなく、数多くのガラス質物質があります。人間の体には、リン酸カルシウムがたくさん使われているのですが、このリン酸カルシウムを高い温度でドロドロに溶かして、透明なガラスを作成することができます。大きな枠で考えれば、ガラスはセラミックスの一種と考えられます。

ガラス膜を燃料電池に使用する

燃料電池は水素と酸素から水ができるという化学反応から電気を作っているのですが、そのためには一方から水素を供給したとき、電子と水素イオンに分かれる仕組みをもつ電極と、さらに、水素イオンだけしか通さない性質を持った膜が必要になります。この水素イオンと酸素が結合して水ができ、電子の流れが電流になります。そこで、この膜の機能を満たすためには、もともとたくさんの水素イオンを蓄えていて、一方から1つ水素イオンを供給すると、反対側に水素イオンを1つ押し出すような材料があれば、この膜の機能を果たしてくれることになります。一般的には、フッ素樹脂を使用した膜を使うことが多いのですが、リン酸ガラス粉末を水と反応させるだけでも、水素イオン伝導性のゲル状物質を作ることができます。このゲルは、無機質なので熱に強く、変性しにくい膜となります。

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名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 環境セラミックス分野 教授 春日 敏宏 先生

名古屋工業大学 工学部 生命・応用化学科 環境セラミックス分野 教授 春日 敏宏 先生

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環境材料工学科

メッセージ

大学3年次までの講義を中心とした授業から、大学の4年次、もしくは大学院に進むと、勉強の形態が大きく変わります。実は、この時期は自分の将来性がはっきりする時期だと思います。この時に最も大事なことは、自立性です。問題を自分で見つけてきて、それを自分自身で解決できる方法を見つけ出すこと。これを達成できると非常に大きな喜びを感じると共に、自分自身が成長できると思います。また今後は国際性も重視されるので、恥ずかしがらずに英語でコミュニケーションする力を付けてください。

名古屋工業大学に関心を持ったあなたは

名古屋工業大学は、世界のものづくりの中心地である中京地区の工学リーダーとして、技術イノベーションと産業振興を牽引するにふさわしい高度で充実した教育研究体制を整備しています。さらに国内の工科系大学のみならず、世界の工科系大学と連携することにより、工科大学の世界拠点として、異分野との融合による新たな科学技術を創成し、有為の人材を数多く世に送り出そうとする構想をもっています。