再生医療とファインセラミックス
次世代の医療として注目される「再生医療」
再生医療というのは、現在一般的に普及している医療ではなく次世代、これからの医療として注目されています。今までの生体材料というものは、例えば人工骨を例に取ると、悪くなったところ、骨折したところに材料を入れて補強をしていくもの、もしくは自分の体の中に一体化していく材料です。現在は、リン酸カルシウム(アパタイト)の粉を水溶液中で成型して、焼き固めたファインセラミックスが中心に使われています。これで治るところは、そのまま使えばよいのですが、とても大きなけがをしてしまった場合や、入れておくだけではなかなか治らないようなところには間に合わないので、もっと積極的に治してくれるような治療方法を探すということで始まったのが再生医療の研究です。
再生医療のコンセプト
再生医療のコンセプトは、我々の体内から、これから何にでも変化するような細胞(間葉系幹細胞と言い、骨髄から採取する)を取り出し、体外でその細胞を増やしてから、何かの材料にのせてまた体の中に戻すというものです。人工骨ならば、これにより骨ができて、大きなけがでも早く治るわけです。しかも、その材料自身は、その部分が直ったらいずれなくなって消えてしまい、最終的には全部自分の体に戻っているといった状態をめざしています。ところが、現在のアパタイトを使用した人工骨では、5年たっても体内に残っているのです。レントゲンで確認しても、1年半程度たつと、もう骨折部が見つけられなくなるので、1~2年程度で体の中からなくなる(溶けてしまう)材料が(使用箇所にもよりますが、)骨再生医療の世界では求められています。また、間葉系幹細胞だけをけがした部分に置いたとしても、その場所にとどまることができず流されてしまうので、細胞がつかまる場所が必要になります。そのためには、細胞がつかまるための穴がたくさんあり、ある程度の柔らかさをもつ、セラミックス(リン酸カルシウム)にも近い足場材料が必要とされています。
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