「笑う看護」には、福が来る!?
病院で地酒入りの点滴?
入院中の患者さんに、いつも配るお茶を「粗茶ですがどうぞ」と出したら? お酒が大好きな患者さんに「今日の点滴は、新潟産の地酒入りですよ」と声をかけたら? これらは、もちろん冗談ですが、気持ちが沈んでいた患者さんも思わず笑顔になるでしょう。人の生死を扱う医療現場にユーモアや冗談は必要ないと思われがちですが、そうではありません。看護におけるユーモアの効果が、注目されつつあります。
ユーモアの治癒効果ってすごい!
ユーモアの効果としては「円滑なコミュニケーションや人間関係が確立できる」「感情の浄化作用を高める」「自然治癒力を高める」などが挙げられます。「笑い療法の父」と呼ばれるカリフォルニア大学医学部のノーマン・カズンズ教授がある実験をしました。愉快な小話を聞く前と、聞いた後の血液沈降速度(炎症反応をみる検査)を調べたところ、小話を聞いた後の方が、炎症反応値が下がっていたのです。また日本でも、落語を聞いた後に炎症を悪化させる物質が減少したという結果や、漫才や漫談を楽しんだ後に、がんへの抵抗力が増すNK細胞値が上昇したという結果が報告されています。
ユーモアを看護技術に取り入れよう
笑いは、とても人間らしい健康的なものです。既存の価値観や常識の枠組みがはずれた時に笑いは起こるので、自分の置かれた状況を客観視し、意味づけを変え、ポジティブな感情を引き出すことができます。また、笑いには「人を楽しませるユーモア」「人を傷つけるユーモア」などがありますが、看護で活用するのは「人を救う、温かいユーモア」でなければなりません。笑いで、まず患者さんが癒やされ、そんな患者さんを見て家族が癒やされ、看護師自身も癒やされます。
さらに看護師がユーモアを取り入れようと意識することで、患者さんの状況や気持ちに敏感になり、コミュニケーションを振り返る機会も生まれます。看護の技術として、ユーモアを活用する研究が始まっているのです。
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先生情報 / 大学情報
椙山女学園大学 看護学部 看護学科 准教授 宇佐美 久枝 先生
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