進化し続けているボランティア活動
集団に心があるなら、それはどこに存在するか
人が2人いるとします。これも一つの集団です。どんなに小さくとも集団ができれば、そこには心が生まれます。仮に人と人が向かい合っているとき、その心はどこにあるのでしょうか。
このようにたずねると、たいてい3パターンの答えが返ってきます。一つは「お互いの心臓のあたり」で、理系の人からは「脳にある」という答が多いようです。集団心理を扱う場合は、心は「お互いの間、目に見えない中空にある」と考えます。
この認識が災害ボランティアをする上で重要なポイントとなります。なぜなら、ボランティアは被災者の心を考えて行動する必要があるからです。もとよりボランティアは相手のことを考え、相手を助けるために活動しています。
しかし、その位置関係を被災者から見直すとどうなるでしょうか。災害を受けて傷ついている自分と、それを「助けてあげましょう」という相手がいる。お互いの心は微妙にすれ違い、せっかくのボランティアも被災者に受け入れられにくくなりがちです。
「助けてあげる」から「心に寄り添う」活動へ
阪神・淡路大震災、そして新潟県中越地震と二つの震災を経て、ボランティアの進め方が変わってきました。神戸は前代未聞の震災でもあり、「とにかく被災地に行かねば」と全国から人が集まりました。さまざまなグループが大挙して被災地に入ったために、その活動はばらばら、各自がよかれと思うことを勝手にやったという感じです。
「これでは無駄が多い」という議論が、反省として起こりました。その結果、ボランティア活動の新たなキーワードとなってきたのが、コーディネートという考え方です。せっかくの善意を生かして、もっと効率のよいボランティア活動となるよう、統制を取ろうとする流れが生まれました。
しかし、効率だけを追求すると被災者の心が置き去りにされる可能性も出てきます。災害復旧ボランティアで何より大切なのが、被災者の苦しみや悲しみに向かい合うことです。被災者の心に寄り添うことを忘れてはいけないのです。
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