公共施設を、民間が管理する「指定管理制度」
税金で成り立っている
ホールや公民館、公園などは一般的に役所が作って管理してきました。しかし、民間に開放し、民間の活力を導入してコストを減らし、サービスも向上させようという発想で2003年に「指定管理制度」が導入されました。確かに役所がサービスを提供するという概念の根本を変えた意義は大きいものがあります。しかし、制度自体が拙速に導入され、議論もほとんどないうちに法律を変えてしまいました。そのため、地方公共団体もこの制度のことをあまり知らず、従来は外郭団体などに任せていた管理を3年以内に指定管理制度に変えなければならなくなり、何の準備もしていなかった地方自治体は大混乱になりました。
一般市民も制度のことをよく知っている人は少なく、身近にある公共施設がいつの間にか民間によって管理されるようになり、最近では企業や商品の名前を施設に付ける「ネーミングライツ」と混同して、企業の施設になったと勘違いしている人もいます。名前や管理は民間でも、住民の税金で作って税金や利用料金で管理運営していることに変わりはありません。
コストは高くなっている
指定管理制度の目的には民間の力の導入のほかに、コストの削減がありました。確かに役所が管理する場合、公務員の人件費は高いので、民間の職員の方が安くなることはあります。しかし、民間に管理を任せたとしても、それまでそこで働いていた公務員を解雇するわけではありません。配置転換するだけです。その人が定年になっても新規の採用はしないので、将来的にはコストの削減になりますが、現状では、その施設で働いていた人の賃金は引き続き支払われていて、それとは別に指定管理業者に委託料が支払われています。つまり民間への支払いがプラスされ、トータルでは高くなっているところもあるのです。
指定管理をしている民間企業も、当初は10兆円産業が誕生したと期待しましたが、最近は利益が上がらないため、維持できずに撤退しているケースも見られます。
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香川大学 法学部 法学科 教授 三野 靖 先生
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