ブラックホール周辺観測の新展開 ブラックホールのまたたきが見えた
見えないブラックホール周辺の活動を観測する
ブラックホールというと、「重力が強く、まわりのものを吸い込み、光さえ出られない暗い穴」と答える人が多いでしょう。確かに宇宙のブラックホールそのものを見ることはできませんが、周辺ではすごい勢いでものが吸い込まれ、それにともない1000万℃という超高温で光る激しい活動が起こっています。しかし、それは人間が感知できる可視光ではなくX線であるため、そのX線を人工衛星などで観測するという方法でブラックホール周辺の物理現象の研究は進んできました。ところが、このブラックホールの「またたき」ともいえる光を目で観測ができる、そんな現象が最近確認されたのです。
初めて可視光で変動をとらえた!
ブラックホールと普通の星が互いのまわりを回っている連星のことを「X線連星」といいます。その中でも突発的に爆発現象を起こすX線新星の1つ「はくちょう座V404星」は正確に距離がわかっている中で地球に最も近いブラックホールを主星に持つ天体です。
2015年、この連星で規則的な光の変動の様子が、初めて可視光で発見されました。この現象がこれまでX線で観測されていたものと同様だったことから、X線観測ではないブラックホール観測の新しいアプローチの可能性が出てきたのです。
臨機応変に観測できるネットワークと望遠鏡で
このような突発的な現象の観測をするには、臨機応変に観測できるネットワークと観測施設が必要です。今回は、世界各地のプロの研究者やアマチュア天文家が口径数十cm程度の市販の望遠鏡などでも観測に協力したことにより、明るさの連続観測を実現しました。
ここからさらに踏み込んだ観測、例えば温度、元素、分子などを調べるには「分光観測」が必要ですが、そのためには大きな口径の望遠鏡も必要です。建設計画が進行中の望遠鏡によって、今後のブラックホール天文学の新展開にも寄与することが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 理学部 宇宙物理学教室 准教授 野上 大作 先生
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