表現を求める

表現を求める

本物よりも本物らしく

あなたは馬などの動物が走っている絵を見たことがあるでしょう。例えば馬が走る姿を描いた絵には、前脚と後ろ脚がどちらも伸びているものがあります。しかし、実は馬はそのような走り方をしません。両脚ともに伸びているということはないのです。ところが、事実とは違っても、その方が躍動感があり、より本物らしさを感じさせます。それが「写実」という表現の意味です。

再現と表現

花でも風景でもスポーツでも、写真を撮ったかのように絵を描くこともできます。例えばサッカーであれば、背番号や顔を克明に描くことで「これは誰々選手が、どの試合で、こういったプレーをしているときの絵だ」と特定させることもできます。
しかし、サッカーそのものの魅力や本質、サッカーをする人間を描こうとするときは、背番号やチームのマークなどを描かない、という「表現」の方が、それらが伝わるのではないでしょうか。

動きを表現するために

絵のモチーフには、そのまま描くことが難しいものもあります。例えば、「風」です。風そのものを描くことはできません。しかし、風が起こす現象や吹いている時の周りの状態を描くことで、鑑賞者に風を感じさせることができます。草花がなびいている様子や、水面のさざ波を描くことで、見る人はそこに風を感じるのです。目には見えないようなものも、ほかのものの形を借りることで表現できるのが絵画です。
スポーツを描くこともそうです。フォルム(形)を描くことに加え、いろいろな工夫をすることによって、スポーツの動きや目には見えない魅力を表現できます。例えば「異時同図」といって、異なる時間のそれぞれの姿を1枚の画面に描く方法があります。画面の形を三角にしたり円形にしたりすることもあります。スポーツは芸術のモチーフとしてチャレンジし甲斐があるものだと考えています。

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先生情報 / 大学情報

筑波大学 芸術系  教授 太田 圭 先生

筑波大学 芸術系 教授 太田 圭 先生

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美術系

メッセージ

真剣に絵を描くことが、楽しいことばかりではないことを示すかのように、英語ではpaintingといいます。描けば描くほど課題が見えて来るものです。しかし逆風がないと凧が揚がらないように、困難な課題でも、向上心を持って立ち向かい、コツコツと描き続けることが大切です。ところで「粘る」という言葉があります。樹木はその枝と同量の「根」を張っています。「ねばる」とは「根張る」、つまり自分の「根」を「張る」ことです。音楽を聴いたり、花や星空などの「身の回りの美」にも興味をもって、あなたの感性を磨いてください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

筑波大学に関心を持ったあなたは

筑波大学は、我が国を代表する研究機関集積地の筑波研究学園都市の中核を占める総合大学です。東京教育大学の伝統を受け継ぎ、柔軟な教育システムと専門分野を備え、学際性を重視しています。「学群・学類」制による学部段階教育、全教員の大学院所属による研究の重視、学生宿舎や課外活動など充実した学生生活支援などが特色です。今や“Tsukuba”ブランドは, 研究成果とともに国際的にも高い評価があります。