マイノリティがいないことを前提にした社会は生きやすいのか?

マイノリティがいないことを前提にした社会は生きやすいのか?

左利きやAB型と同じ割合なのに

同性を恋愛対象としたり、性が自分の認識と戸籍とで異なっていたりする性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)、いわゆるLGBTQの人たちがどのくらいの割合で存在するか調査した複数の報告をみると、3~8%という結果が示されています。これは左利きの人や、血液がAB型の人の割合とほぼ同じです。左利きやAB型は差別されませんが、LGBTQの人たちは差別や偏見にさらされています。実は以前、同性愛は精神疾患と考えられていましたが、1990年にWHOが「同性愛は疾患ではない」と定義しています。

LGBTQと障害や認知症の課題との共通点

例えば、多くの同性愛の人たちは、2つの偏見に苦しんでいます。1つは「恋愛や結婚は、男と女でするもの」という社会の偏見で、もう1つは「そんな枠組みからはずれた自分はおかしい」という自身の偏見です。このLGBTQをめぐる問題は、障害や認知症をめぐる問題と共通しています。どの人も周囲からの差別や偏見を受け、自分でできることの機会や可能性を奪われてしまっています。なぜそうなのかといえば、これまでの社会が「障害者や認知症、LGBTQの人たちがいないこと」、つまりマジョリティ(多数者)の都合を前提につくられ、運用されてきたからです。

社会の仕組みをアップデートしよう

人間本来の在り方を考えれば、とても多様性にあふれていることがわかります。例えば男らしさ、女らしさという社会的性差(ジェンダー)が注目されていますが、「100%男らしい男」などは定義できません。人間にも性にも揺らぎがあるのです。近年はSNSなどで多様なセクシュアリティの人たちがいることが可視化され、個人の意識は少しずつアップデートされてきました。しかし、社会の制度や仕組みはまだアップデートされていません。だからこそ、このような社会的課題に私たちが目を向けることには意義があります。それは私たち自身が生きる未来をより良い方向に変えていくことにほかならないからです。

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筑波大学 人間学群 障害科学類 助教 河野 禎之 先生

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メッセージ

大学というのは、自分の未来や可能性が広がる場所だと思って来てください。その代わりに自分が広げようと思わない限り、広げられないことも確かです。私は、高校よりも大学に入ってからのほうが勉強を面白く感じました。好きな研究のために知識を学ぶので、やはりモチベーションが違うと思います。私が所属する障害科学は、「障害」というマイノリティの課題から、多様な人々がともに生きる世界を考える学問です。克服するというより、障害とともにどうより良く生きていくかを考える、懐の広い分野です。ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

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筑波大学は、我が国を代表する研究機関集積地の筑波研究学園都市の中核を占める総合大学です。東京教育大学の伝統を受け継ぎ、柔軟な教育システムと専門分野を備え、学際性を重視しています。「学群・学類」制による学部段階教育、全教員の大学院所属による研究の重視、学生宿舎や課外活動など充実した学生生活支援などが特色です。今や“Tsukuba”ブランドは, 研究成果とともに国際的にも高い評価があります。