プロの選手の微妙な感覚を取り戻すスポーツ医学のリハビリとは

プロの選手の微妙な感覚を取り戻すスポーツ医学のリハビリとは

目を閉じても膝の曲がり具合がわかるのはなぜ?

例えばプロのサッカー選手、それも一流と言われるプレイヤーたちの感覚が、どれぐらい繊細か想像できるでしょうか。角度にしてわずか1度ずれただけでも、ボールが飛んでいく方向は微妙に狂うのです。キーパーを避けるようゴールポストぎりぎりを狙ったシュートなら、本当に少しの違いで外れる可能性もあります。
ここで一つ実験をしてみましょう。目をつぶって膝を曲げていってみてください。曲がり具合はだいたいわかりますね。膝のまわりには感覚を感知するセンサーがたくさんあって、それらがつかんだ位置情報は脳に伝えらます。だから目を閉じていても膝がどれぐらい曲がっているかがわかるのです。
この感覚が普通の人より優れているのが、一流のアスリートです。と言っても彼らが、膝の角度を数字で正確に言えるわけではありません。けれども微妙な「感じ」の違いは的確につかんでいます。

ケガをしたスポーツ選手のリハビリで大切なこと

サッカー選手は、プレイ中にじん帯を切ることがあります。たいていは手術で元通りに治りますが、一流選手ほど手術後に「何か感じが違う」と違和感を訴えるようです。「感じ」ですから、極めて微妙な感覚のズレなのでしょう。とはいえシュートの角度が1度違うだけでゴールが決まる、決まらないといったレベルで戦っている選手にとっては、この感じこそが大事。しっくりこないと、ケガをする前のようなプレイができません。
普通は手術後のリハビリと言えば筋力回復が主な目的です。これまでは、手術した箇所がきちんと治り、落ちた筋力を回復できれば問題ないと考えられてきました。
ところがこれでは微妙な「感じ」の狂いは未修整です。そこで、どうすればいいのか。大切なのは、膝の動きだけではなく、膝のセンサーの感度も元通りにすることです。感覚面までを含めたリハビリが必要なのです。そこで、今では手術にはいる前からセンサーの感度を落とさないようなリハビリも考えられています。

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島根大学 医学部 医学科 教授 内尾 祐司 先生

島根大学 医学部 医学科 教授 内尾 祐司 先生

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メッセージ

人がやらないことや、「正しい」とか「これが標準だ」と誰も疑問に思わなかったことを、本当かどうかと疑ってみる。このリサーチマインドが、医学の世界ではとても重要です。医学には、どこまで突き詰めても、これで終わりという限界がありません。正解のさらに先に新しい正解が待っています。しっかりとした知識を身につけ、その上で新しい道を拓いていくこと。この気持ちこそが医療医学を進歩させるのです。医学をめざす人はぜひ、こうした気概を持って、この世界に飛び込んできてください。

先生への質問

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