人と社会の相互作用を知り、合意形成や問題解決をめざす
人と社会の関係を考える
心理学といえば、多くの人は人間の心の内側を探る学問を思い浮かべるでしょう。しかし「社会心理学」では、人間の内側ではなく、外側にある心を見ていきます。人間の行動や考え方は他人に影響されるものですし、環境によっても制約を受けます。いろいろな人が集まった集団が、社会問題とどのように関わっていくのかを社会心理学では考えていきます。世の中には、一人一人が協力しなければ解決できないことなのに、個人が自分勝手な行動をとるために状況の改善に向かわない問題が多くあります。「社会的ジレンマ」と呼ばれるこうした課題を解消するにはどうしたらよいのか、一人でも多くの人が納得できる合意形成にはどのような方法があるのかを考えることが、社会心理学の大きな役割です。
家の近くに風力発電所?
風力発電などの再生可能エネルギーの導入には、多くの人が賛成の立場を取るでしょう。ところがいざ自分の家の近くに発電施設が作られるとなると、反発心を抱いてしまう人は少なくありません。そこでさまざまな立場や価値観の人たちがどうすれば折り合いをつけられるのかを考えるために「ゲーミング」と呼ばれる手法を使い、それぞれ自分と異なる立場の人になりきって模擬的に交渉する実験が行われました。風力発電を進めたい事業者や、周囲の自然環境を守りたい人、健康被害を気にする住民などさまざまな立場にある人たちが、相互作用を通じて合意形成に至ろうとするプロセスを通じて問題の解決をめざします。
ポイ捨てを減らすための社会実験
世界中で問題になっているプラスチックによる環境汚染問題の一つの解決法として、いかにポイ捨てを減らせるかさまざまな仕掛けをした実験が行われました。河川敷に花を育てたプランターを並べるなど、きれいにした場所ではポイ捨ては減りました。それに対して、夜間に照明をつけて明るくするのはポイ捨てにはあまり効果が見られませんでした。このように、日常的な生活空間からも、社会と人間行動をめぐる問題の発見と解決のあり方が浮かび上がります。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 文学研究院 教授 大沼 進 先生
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