行動や習慣を前向きに捉えて、長所をのばす「ポジティブ心理学」

行動や習慣を前向きに捉えて、長所をのばす「ポジティブ心理学」

思春期は心のバランスを崩しやすい時期

11~18歳頃までのいわゆる思春期にあたる青年の多くは、体と心の発達過程にあります。「一人の大人としての自分(自我)」の形成が始まることで、自分と他人を比べて自信をなくすなど、心のバランスを崩しやすい時期でもあります。心の働きは行動や環境、周囲との関係性によって左右されます。そこで心理学の分野では、青年の健全な心の発達を促す有効なサポート方法の研究が進んでいます。

行動や習慣のメリットに注目

青年の心を豊かに育む方法として注目されているものの一つに、1998年にアメリカで提唱された「ポジティブ心理学」があります。心理カウンセリングの多くが「欠点」に焦点を当ててその改善策を見いだすものですが、ポジティブ心理学に基づいたカウンセリングでは、対象者の行動や習慣を前向きに捉えます。例えばSNS利用を例に挙げると、依存や誹謗(ひぼう)中傷被害・加害といったデメリットの方に目を向けられることが多いでしょう。しかし前向きに捉えて見てみると、ネット上でのコミュニケーションが社会スキルの向上につながるというメリットがあると考えられます。また調査からは、SNS上の友人関係からもたらされる安心感や自己肯定感は、対面とほとんど遜色(そんしょく)がないとわかりました。

視点を変えることで長所が見えてくる

このように、一見悪影響を及ぼすと思われている行動や習慣であっても、視点を変えることで特技や長所に転換できる場合もあるのです。つまり、これまで見えていなかったその人の個性や長所を引き出すことが可能になります。さらにはメンタル不調の予防効果があるという研究結果も出ています。ポジティブ心理学は人びとがそれぞれの個性や長所を生かして活躍するきっかけになるのです。今後は、学校だけでなく、家庭や職場など、人と人が関わるすべての場所で応用されていくでしょう。そして将来的には、すべての人にとって生きやすい社会の実現にもつながっていくと考えられます。

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順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 吉武 尚美 先生

順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 准教授 吉武 尚美 先生

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心理学、教育学、教育心理学

メッセージ

あなたは自分に自信を持つことができていますか。自分の長所と短所、どちらを多く挙げることができるでしょうか。自分の「心」を客観的に見ることで、まだ気が付いていない「良いところ」や「得意なこと」が明らかになるかもしれません。また、自分が人よりも劣っているという考えは、実は間違っているということに気が付くかもしれません。
人と違うことは恥ずかしいことではありません。ぜひ心理学を学んで、あなたの中にある長所を探しましょう。そして今よりももっと自分のことを好きになってもらいたいです。

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順天堂大学国際教養学部は、人を強く思う気持ち「仁」の精神を生かし、社会課題、異文化コミュニケーション、そして健康をテーマに、世界に目を向けたグローバルな視点で問題を解決できる真のグローバル市民を育成します。
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