運動の後は筋肉を温めろ! 痛みを科学で和らげる

解明されていない筋肉痛の仕組み
筋肉痛は、激しい運動や普段使わない筋肉を動かしたときに起こることが多く、運動後しばらくしてから痛みが現れる遅発性であることが特徴です。最近の研究では、運動による筋肉の微細な損傷に代謝的ストレスが加わることにより、さまざまな生理学的変化が起こり、遅れて筋肉痛が発生することがわかってきました。しかし、実際の生理学的反応については未解明の部分も多く残されています。同時に、これまで使われてきた筋肉痛の予防法や治療法の科学的な裏付けが取れていないのが現状です。
温めると痛みが和らぐ?
運動後の処置として筋肉を冷やす「寒冷療法」が広く行われていますが、近年の研究では「温熱療法」の方が効果的であることが示されています。動物実験で運動後に温熱パックを用いて20分間筋肉を温めたところ、冷やした群よりも痛みの軽減が見られました。その理由は、運動後に筋肉を温めると、血流が増加して代謝が活発になることで、痛みを引き起こす原因物質が除去されやすくなるためと考えられています。ただし、打撲など炎症を伴う場合は別で、状況に応じた対処が必要です。現在は、より効果的な温め方や、温める時間、回数などの研究が進められています。
筋肉痛を防ぐための科学的アプローチ
筋肉痛の予防には、運動の「繰り返し効果」が重要だということもわかってきました。同じ運動を1〜2週間空けて2回目を行っても、2回目はほとんど筋肉痛が起きないのです。これは、1回目の運動で体が適応するためと考えられています。また、年齢による違いも研究されており、筋肉痛の発症に年齢はあまり関係がなく、高齢になるほど回復も遅くなる傾向があります。このため、日頃からストレッチや軽い運動を継続することが推奨されています。また、運動を始める前の準備運動やアミノ酸系のサプリメントの摂取も、予防に効果があるとされています。これらの研究は、スポーツでの効果的なトレーニング方法や、高齢者の運動継続支援にも生かされています。
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帝京大学 医療技術学部 柔道整復学科 講師 坪島 功幸 先生
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