地球温暖化を分子レベルで理解する

地球温暖化を分子レベルで理解する

光と温度の関係

あなたが日々目にしている光は可視光といって、電磁波のごく一部です。可視光よりも波長が長い電磁波には、赤外線、ラジオ波、マイクロ波などがあり、短いものには紫外線やエックス線、ガンマ線などがあります。
光は温度と密接な関係があります。石を熱すると赤い光が出ますが、それを熱し続けると、さらに明るくなります。光のエネルギー量は、温度の4乗にほぼ比例します。
また、光の波長や振動数も温度によって変化します。電気溶接を見たことがあるでしょう。あれは焼け石よりも温度が高いので、青っぽい光が出ます。つまり、温度が高いほど短い波長の光が出ます。私たちの体からも光(可視光ではなく波長の長い赤外線)が出ています。地球からも赤外線が出ています。絶対零度(約-273℃)でない限り、物体は何らかの光(電磁波)を発しているのです。

分子の振動と赤外線

ところで、物質を構成する分子は常に振動しています。このとき、赤外線が吸収されたり放出されたりしています。振動する分子に赤外線を放射すると、分子が赤外線を吸収し、ますます振動します。それがさらに進むと赤外線を放出します。分子の振動にはいろいろな種類があり、その振動数は赤外線の振動数に相当します。一方、分子に赤外線ではなくマイクロ波や可視光を放射しても、何も起こりません。

温室効果ガスが増えると温暖化が進む仕組み

太陽から放出される電磁波は、主として可視光です。そして、地球からは赤外線が放出されます。この2つの電磁波のバランスによって、地球の大気温が決まります。可視光は分子に影響せず、赤外線は分子に吸収されると述べました。つまり、温室効果ガスが増えると吸収される赤外線が多くなり、地球へと再放出される赤外線も多くなるので、気温がどんどん上がってしまうのです。水の分子も赤外線を吸収・放出しますが、昔から量が一定なので、影響を考慮しなくてもいいのです。二酸化炭素など、ここ数十年で急激に増えたガスが問題になるのは、こういうわけなのです。

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上智大学 理工学部 物質生命理工学科 教授 東 善郎 先生

上智大学 理工学部 物質生命理工学科 教授 東 善郎 先生

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メッセージ

物理科学に興味があるのならば、伝統的な基礎をしっかりやることです。時代に逆行するかもしれませんが、流行の分野の上っ面をかじるだけでは意味がありません。あなたの科学者としての一生を支えるのは、数学で言えば微分積分や線形代数、物理でいえば古典力学、熱力学、量子力学などの基礎的な学問です。大学に入ったら、卒論で流行のトピックスを取り上げようなどとは考えず、結果が出なくてもいいから基礎をとことん勉強してください。

上智大学に関心を持ったあなたは

日本初のカトリック大学として開学し、創立当初から国際性豊かな大学として、外国語教育に重点を置いてきました。留学制度も充実しており、世界約80ヶ国に390校以上にも及ぶ交換留学・学術交流協定校があり、コロナ禍の2020年度、2021年度を除き、毎年約1,000人の学生が世界の様々な国や地域へ留学しています。また、少人数教育も本学の伝統のひとつです。教員と学生の距離が近く、また学生同士が率直に意見を交し合う、きわめて理想的な教育環境が整っています。他者を思いやり、社会に奉仕できる人材を育成します。