サンゴ礁から地球環境を考えよう!

サンゴ礁から地球環境を考えよう!

氷期・間氷期で海面は125m変動する

産業革命以降、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出により地球温暖化が進み、気候変動の影響が私たちの生活を脅かしつつあります。地球温暖化では、気温上昇や極端な気象現象の増加に加え、海面上昇が大きな脅威となっています。それは、沿岸域に拡がる多くの大都市や耕地が水没の危機に直面しているからです。現在の地球は、氷期と間氷期を約10万年の周期で繰り返しています。これは、地球温暖化とそれに伴う環境変化を考える上で重要です。寒冷な氷期から温暖な間氷期にかけての地球表層環境の変化に対し、海面がどのように上昇していくのかを教えてくれるからです。

サンゴ礁が示す海面変動

では氷期から間氷期にかけての正確な海面の変化はどうすればわかるでしょうか? 海面付近で成長するサンゴ礁は、水温や水深などに敏感です。そのため、サンゴ礁の生物の遺骸(いがい)からなる炭酸塩堆積物を調査・分析することで、正確な海面変動を知ることができます。特にサンゴは、岩盤上に固着して成長し、また種によって生息する水深が異なるので、5m程度の精度で海面の位置を把握できます。調査によれば、約18,000年前の最終氷期の海面は現在よりも125m程度低かったことがわかってきています。また琉球列島では、最終氷期にもサンゴが生育していたことが明らかにされています。

さまざまな時間・空間で地球環境の変化を考える

地球のリズムでは、現在は間氷期の海面が最も高い時期から徐々に海面が下降する時期にあたります。しかし地球温暖化により、逆に海面が上昇することが予想されています。そのため、地球規模や何十万年という時間スケールで起こる現象と人間活動との相互関係を、さまざまな角度から考え、結びつける地球科学的な広い視野が重要です。最終氷期から間氷期である現在までの海水準変動と大気・海洋との関係は徐々にわかりつつあります。私たちは、地球に刻まれた過去の記録を学び、それに基づいて地球温暖化の将来を予測し、最善を尽くすことが大切でしょう。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 理学部 理学科 教授 松田 博貴 先生

熊本大学 理学部 理学科 教授 松田 博貴 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

地球科学、環境学、サンゴ礁学

先生が目指すSDGs

メッセージ

現在の地球環境は、いつまでも同じものではありません。過去と同じように未来にも変化していきます。変化する要因はさまざまで、それらは複雑に絡み合っています。もちろん、その中には人為的な要素も含まれるでしょう。これらのことから、私たちは地球環境を広い視野に立って考える必要があります。地球環境科学は過去だけでなく、現在の環境がいかにつくられたかを明らかにする学問です。環境変化についてのメカニズムの解明は、人類の将来についてもいろいろな指針を提供してくれるはずです。

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熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。