眠りが苦手な子どもにどう向き合うか 睡眠と教育を考える
睡眠と心
人間にとって睡眠は非常に重要な行為です。特に成長段階にある子どもにとっては、心身の成長や生活リズムの安定においても睡眠が重要な意味をもちます。眠りに落ちる過程は、単に目を閉じて体が動かなくなっているだけに見えますが、「心」ではダイナミックかつ複雑な変化が起こっています。こうした変化の様子は、脳波計や活動量計、あるいは睡眠日誌というツールを使った研究によってある程度客観的に把握できますが、まだ解明されていない部分も多く残されています。
うまく眠れない子どもたち
近年の研究では、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の特性と睡眠の間には、お互いに影響を及ぼし合う関係が想定されています。発達障害のある子どもたちは、学校生活がうまくいかないことで否定的な評価を受けてしまい、それがストレスにつながるケースが多くあります。ストレス過多の状態は私たちの眠りの質の悪化を招きますが、障害やストレスによる睡眠困難であっても、朝寝坊や授業中の居眠りは、周囲からの「怠惰」「生活リズムが守れない」といった評価につながりやすくなります。それが「自分は駄目だ」という思い込みや更なるストレスの原因になるのです。こうした悪循環を断ち切るためには、彼・彼女たちの困りごとや苦手とすることを共に理解し、少しでも日中の活動の質を高めることが重要なのです。
教育と睡眠
「睡眠」と「教育」に接点があることはあまり知られていませんが、複雑な眠りのメカニズムを解き明かすことは、学校をはじめとする社会的な生活において困難を抱える子どもたちに対する理解や支援を充実することにもつながります。また、睡眠や発達障害、あるいはそれらと密接につながっている子どもの「心」は、いずれも目に見えるものではありません。私たちは目に見えないものを怖がったり、避けたりしてしまいがちです。まずはそれらに向き合い、目に見えないところからも解決の方法を探すという姿勢は、研究・実践を問わずこれから教育に携わるすべての人に欠かせない要素といえるでしょう。
参考資料
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