超音速旅客機の離着陸時の安定した飛行法を探る
世界に抜きんでる超音速旅客機の研究
1950年代に始まった超音速旅客機の研究は、欧米各国で競うように進められました。1969年に初飛行を行ったフランスとイギリスの共同開発旅客機コンコルドは、墜落事故などが原因で2003年には商業飛行が終了しました。その後、超音速旅客機の研究は世界的に下火になりましたが、日本では現在JAXA(宇宙航空研究開発機構)が中心となって研究を進めています。大学でもその基礎となる研究を行っており、日本の超音速旅客機の研究は、世界的にみてトップクラスの位置を占めるようになりました。
超音速と同時に失速時の問題を減らす
超音速旅客機は速度を出すために従来の旅客機とは違う、細長く尖った形をしています。超音速の世界は、一般的な旅客機などに起こる空気の流れの性質が通用しない世界だからです。ピストンの中の空気に圧力をかけると、空気の体積が縮みますが、超音速の世界ではこの性質が関わってきて空気の流れのパターンが変わるのです。そのため、超音速旅客機の機体は、この性質に合わせて空気を切り裂くような形をしています。
とはいえ、離着陸時は一定の時間、遅いスピードで飛行せざるを得えません。しかし遅いスピードのとき、この機体は左右や前後に傾く動きをしてしまいます。このとき、翼の上の空気は、前から後ろにぐるぐると渦(うず)を巻いて動いています。それを防ぐために最善の翼の形を探る研究が進んでいます。
進む超音速旅客機の研究
空気の流れの研究は、以前は例えば模型の翼に白く着色した油を塗って風洞(ふうどう:空気の流れを作るトンネル型の装置)に入れ、流れた油の形を見るという方法で行われていました。最近はレーザーを使って、機体の周りを流れる空気の速度を定量的に測れるようになり、翼の上の空気の渦の芯が変化することがわかってきました。
このような研究によって、遅いスピードのときにも安定して飛行する超音速旅客機が開発され、将来は日本製の超音速旅客機が空を飛ぶ日がくるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 李家 賢一 先生
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