空気力学の研究で着陸時に失速しない翼を開発する
飛行機の着陸時は危険な時間帯
飛行機は、巡航速度で飛行している間は安定していますが、着陸の際にはスピードを落とすため、安定しません。飛行機は遅く飛行すると揚力が低下するからです。墜落事故の約80%は着陸時に起こっているのです。
そこで、スピードを落としても失速しにくい飛行機の形とは、どのようなものなのかを追究する研究が続けられています。最新の研究では、翼の形を着陸時にほんの少しだけ変化させることで失速が防げるのではないかと考えられています。
空気の流れの特性を知る
飛行機は、翼の周りを流れる空気が翼の上下で圧力差が生じて揚力を生み、飛行します。例えば機首(飛行機の頭部)を上げていくと、翼の角度が変わるためにこの空気の流れが乱れて翼の後ろに空気の渦(うず)ができます。さらに角度が上がると、この渦がはがれる状態になります。すると、飛行機は確実に失速します。この現象を「渦の剥離(はくり)」と言います。
この現象そのものは以前から知られていましたが、メカニズムは完璧にはわかっていません。しかし、空気の流れは小さい石けんの泡のようなもので、それが小さな渦を形成しており、その泡のようなものが突然壊れて渦の剥離が起こることがわかっています。
渦の剥離をなくす翼とは
渦の剥離をなくすために考案されたのが、翼の上に非常に薄く幅の狭い板を取り付けることです。この板を適切な位置に設置すると、空気の流れを制御することができます。乱れた空気の流れが、この板を立てると一瞬にしてなくなることが実験で確かめられます。これは、飛行機が失速せずに飛行し続けられ、墜落を免れるということを意味しています。この現象はまだ完全に解明されていないので、渦の細かい流れを計測したり、最適な板の大きさや取り付ける場所を調べるなどの研究が続けられています。
この翼の研究が進めば、飛行機の事故は今よりもずっと減ることでしょう。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 李家 賢一 先生
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