少子高齢化の現在、労働人口数アップを阻む主婦の優遇制度とは

少子高齢化の現在、労働人口数アップを阻む主婦の優遇制度とは

働く人を増やさないと日本は大変

少子高齢化に歯止めがかからないことで、現在の日本は労働人口が減る傾向にあります。国は働く人が納める税金や社会保険で高齢者や子どもといった働かない層を支えているので、これは大問題です。なんとかして働く人たちを増やさなくてはなりません。
ポイントとなる層は高齢者、そして専業主婦です。高齢者については、日本の高齢者は働きたい人が多く、周囲もそれを嫌いません。適した職場を提供すればこの問題は解決します。しかし、専業主婦には制度的な問題がいくつかあります。ここでは、配偶者控除と介護保険を例にとりましょう。

「働きたいのに我慢する」って?

配偶者控除とは、サラリーマンの妻が一定額まで稼がなければ、夫の税金がその分安くなる制度です。これは男女が逆でもいいのですが、現実には男女が逆という例はほとんどありません。この制度があることで、たとえたくさん働きたい主婦でも働くのを我慢するという現象が、今の日本では普通のこととなっています。働きたいのに働くのを我慢するのは労働供給のあり方がゆがんでいることを意味します。これは社会政策上望ましい姿ではありません。

介護保険の矛盾

また、介護保険にも矛盾があります。介護保険は専業主婦であれば保険料を払わずに入れます。しかし、そもそもこの制度は「高齢者の介護は個々の家庭でなく社会全体で行いましょう」という制度です。仮に主婦が介護をすべて行うのならば、その分主婦は働けないわけですから、何らかの優遇措置をとることには政策上の一貫性があります。しかし、社会で介護を行うのですから、そのための労働力と財源が必要になるのに、その上主婦を優遇し続けては、財政が破たんしてしまいます。
このように、主婦の優遇制度は考え直されるべきものですが、同時に男性がもっと家事や育児に参加できるような職場環境を整備することも忘れてはいけません。また、この問題の奥には「性差と役割」というジェンダー論も関わってくるのです。

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東京大学 教養学部 総合社会科学科 教授 瀬地山 角 先生

東京大学 教養学部 総合社会科学科 教授 瀬地山 角 先生

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社会科学、社会福祉学

メッセージ

私の高校時代の体験で言うと、東大の入試に向けた勉強はとても楽しいものでした。いい問題ばかりで、すごく鍛えられました。特に社会科の論述問題はよい鍛錬になったと思います。暗記ではなく、論理を構成する力を身につけることができたからです。ですから受験勉強であっても、それを楽しんでください。
また、高校時代は人生の中でも前向きにいろいろなことができる、とても元気な時代ですので、勉強以外にも興味のあることは何でもやって、高校時代を楽しみましょう。私が一番憶えているのは毎朝走った5キロのランニングコースです。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。