批判的に考えるとは

批判的に考えるとは

情報を見極める「批判的思考」

東日本大震災のとき、あなたはテレビや新聞をはじめ、インターネット、家族、友人などを通して、さまざまな情報を見聞きしたと思います。何が正しくて、誰の言葉を信じればよいか、わからなくなったのではないでしょうか。そんなとき、情報との向き合い方のヒントとなるのが、「批判的思考(クリティカル・シンキング)」です。これは、論理的で偏りがなく、物事を多面的、客観的にとらえる思考を意味します。「批判」と聞くと、他者を攻撃するようなイメージがあるかもしれませんが、むしろ自分自身の内面を振り返り、自分を知的に吟味する思考と言えます。

批判的に情報を読解・判断するスキル

物事を考えたり、議論したりするとき、まず問題や仮説などを「明確化」し、その根拠となるデータや事実の確かさを「検証」します。それらを多面的に比較・判断して「推論」を立て、具体的な「行動決定」に結びつけます。
では、あなたが進路決定をするときのケースで考えてみましょう。第一に明確にすべきはあなたが大学に行く目的です。次に志望する大学を複数あげ、その情報を見かけに左右されないで、さまざまな角度から吟味します。入学の難易度や通学時間といった大学側の制約条件と、自分の学力や経済状況などを照らし合わせると、具体的に自分が入試のためにクリアすべき課題と、やるべき行動が見えてきます。批判的思考には、このような情報の読解力や判断力といった「スキル(技術)」が必要なのです。

行動を支える「態度」

スキルを持っていても、実際に行動しないと批判的思考は身につきません。心理学では行動を支える信念のことを「態度」と言います。物事を「論理的にとらえる」「証拠に基づいて判断する」ほか、相手の意見は「その人の思い込みが入っていないか」「自分と同じ意見を重視していないか」などを意識しながら聞く客観的な「態度」が必要です。批判的思考とは、他者の意見にも耳を傾け、共同してよい社会を築いていくうえでも大切な思考なのです。

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京都大学 教育学部  教授 楠見 孝 先生

京都大学 教育学部 教授 楠見 孝 先生

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心理学

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心理学は、人の心の働きや行動を科学的に説明したり、予測したりすることで、人や社会に役立てる学問です。高校のように教科書に書かれていることを、そのまま理解して覚える学習ではなく、大学はあなたなりに考え、答えがひとつでないものを明らかにしていく学びの場です。講義で紹介される学説は、あくまで現時点でのものであり、将来塗り変えられる可能性もあります。学問の最前線で、興味や関心に従って幅広く学び、その背後にあるものも探究していきましょう。

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